米国を中心に世界的なベストセラーとなっている「21世紀の資本」を執筆したトマ・ピケティ氏(パリ経済学校教授)が1月末に来日した。同氏による多くの講演やインタビュー記事がメディアを通じて伝えられ、日本でも同書の翻訳本が、経済書として空前の大ベストセラーとなるなど、稀にみるブームが起きている。
ピケティは、どこまでアベノミクスに対して批判的か?
ただ、メディアを通じたピケティ氏の発言について、本人が意図しない形で伝えられていると思われるケースもよく目につく。
インタビュー記事のフレーズは、それを編集するメディアのさじ加減で、往々にして独り歩きしがちだ。
筆者が目にしたインタビュー記事の中には、ピケティ氏が「アベノミクスに対して批判的な姿勢を明確にした」などと、本人の言葉と別の部分で記載されていたものもある。「経済格差」の権威となりつつあるピケティ氏が、アベノミクスに懐疑的であるという印象を強める報じられ方になっているのだ。
同様に、ピケティ氏が唱える経済格差の問題を、「反アベノミクス」を掲げる野党が政治的に利用する動きもみられる。
実際には、こうした文脈で言及される「アベノミクス」という批判の対象が、そもそも何であるかが曖昧であるケースがほとんどだ。筆者にとっては理解が難しいが、あえて解釈してみると、「アベノミクスで経済格差が広がった」という命題を、権威であるピケティ氏が問題にしているという姿を演出したいようだ。実際に、ピケティ氏がアベノミクスで経済格差が広がったと明言しているとは思われない。
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