「シルク・ドゥ・ソレイユ」を経て起業した彼女の今 五十川舞香さんが説く、Web3だから実現できる事
——しかし、最終的にはMicrosoftも辞めて、ご自身の会社を立ち上げられました。
はい。1年ほどで退社しました。理由は、正直に言うと業務内容があまり面白くなかったからです(笑)。
私はサイバーセキュリティーの担当者として国家防衛のプロジェクトに携わっていたのですが、業務の性質上、変化が起きづらく停滞感が漂っていて……。
シルクのパフォーマーとして多くの人に笑顔を届けていた日々と比べると、自分の仕事がどのように役立っているのかを実感しづらい環境でした。良くも悪くも、自分の存在がちっぽけであることを思い知らされたんです。
もっと、私自身がワクワクしながら取り組めて、世の中にインパクトを与えるような仕事がしたい。『Webacy』の構想を練り始めたのは、そんなモヤモヤを感じていた頃でした。
身内の不幸をきっかけに…
——Webacyのアイデアが湧いたのは?
きっかけは身内の不幸でした。私のいとこが若くして世を去ってしまったんです。
それだけでも心が引き裂かれるようでしたが、同時に悩まされたのが、いとこの保有するデジタル資産の散逸でした。
私たちは今や多くの時間をオンライン上で過ごしています。ソーシャルメディアのアカウントはもちろん、人によっては暗号資産を保有している場合もありますが、これらを効率的に管理する方法はまだ存在しません。
社会の実態はとっくに変わっているのに、こと遺産の管理となると、紙の遺言書や伝統的な法律といった古い方法に基づいて処理するほかないのです。
その結果、ソーシャルメディアのアカウントは利用者が亡くなっても放置され、いわゆる”ghost” accounts(休眠アカウント)となってインターネットに残存する状況となりました。