「シルク・ドゥ・ソレイユ」を経て起業した彼女の今 五十川舞香さんが説く、Web3だから実現できる事
——非常に高度なテクノロジーであるにもかかわらず、ユーザーに要求する行動はとてもシンプルなのですね。しかし、Webacy自体のパスワードを忘れてしまったり、Webacyがハッキングされて情報が漏えいしたりといったリスクはないのでしょうか?
まったくありません。なぜなら、Webacyはあくまでもインフラであり、Webacy自体が直接資産にアクセスしたり、取引をしたりすることは決してないように設計されているからです。
WebacyはMetamaskやCoinbase wallet、WalletConnectといった複数のウォレットサービスと連携しており、Webacyへのログインに使うのもこれらのサービスのアカウントです。
Webacy自体にはユーザーID/パスワードがないため、「Webacyのパスワードがわからないせいで、遺族が資産にアクセスできない」ような状況には陥りません。
また、Webacyがユーザーの資産のパスワードやシードフレーズ、秘密鍵を要求することもないため、「Webacyがハッキングされたせいで、すべての秘密鍵が流出してしまった」というようなトラブルも起こり得ないのです。
遺産相続につきものの「相続割合」も指定できる
——安全性の高い仕組みですね。遺産相続の仕組みについて、くわしく教えていただけますか。
遺産相続の根幹にあるのは、パニックボタン(緊急通報用の機能)と同じ技術です。「completely decentralized, on-chain mechanism」の技術で、ユーザーのWeb3活動を監視し、非活性なアカウントになると資産へのアクセス許可を与える仕組みです。
つまり、あらかじめ相続人のウォレットを登録しておいて、一定の条件下、つまりユーザーが死亡した場合に、受益者がその資産を移動する許可をアクティベートするわけです。
その上で、遺産相続につきものの「相続割合」も指定できるところがWebacyの特徴です。
例えば「1ETHのうち、70%は兄に、30%は妹に」のような形ですね。なお、NFTの場合は分割ができないため、「誰に受け取らせるか」を指定することになります。
私たちはこれを「デジタル遺言」と呼んでいます。現在のところ相続人に指定できるのはウォレットを持っている人だけですが、いずれは高齢の両親や幼い子ども、Web3に詳しくないパートナーなど、ウォレットを持っていない人にも相続させられるよう仕組みを整える予定です。
扱いのややこしいデジタル資産の相続を簡便にすることで、遺族が故人をしのぶ手助けをしたいのです。