会話のない親子がはまる「3つの落とし穴」 子どもがそっけないのは、思春期だから?

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あなたの言動への「反作用」を疑え

まず、ひとつ目の「作用・反作用」についてお話します。「作用・反作用」とは物理学で出てくる言葉です。たとえば上に高くジャンプしようとするとき、地面を蹴ります。このときに、ひざを曲げて強く蹴るほど、高く飛び上がることができます。つまり、地面に加えた力の分だけ、高くジャンプすることができるわけです。このように、加えた力と同じ力が反対方向に働くことを、「作用・反作用の法則」と言います。

この法則を、人間関係に当てはめるとどうでしょうか。たとえば、誰かから「嫌い」と反発されたら、あなたもその人のことを同じように「嫌い」になって反発するでしょう。反対に、自分に好意を寄せてくれる人のことは、これまで嫌いであっても、相手を受け入れる気持ちになるのではないでしょうか。

もし「学校であったことをどうして話さなさいの!」と子どもに要求するならば、反作用が働き、同じぐらい強い気持ちで「話さない!」という結果になります。それよりも逆にお母さんが、今日1日あったことを話してみてはいかがでしょうか。「今日、こんなことがあったんだけどね……」と話しかけるのです。

最初はうるさがって聞いてくれないかもしれませんが、だんだんと子どものほうからも、また話をしてくれるようになります。このことをを念頭に置いておくと、どのような会話が望ましいか、わかってくることでしょう。

知らずのうちに「非承認」しているかも

2つ目は、「承認する」ことが大切であるということです。現代は「承認」欲求がとても強い時代です。近年、FacebookをはじめとしたSNSが盛況です。個人の情報を気の置けない人たちとの間でやり取りしたり、動画を逐一アップロードしたり、ネットの世界では特に活況を呈しています。この世界では「いいね!」を押してもらうことで情報が拡散していくことを目的にする人もいますが、一方で、「いいね!」をもらいたいという心理も働いています。つまり他者から「承認」してもらいたいという欲求が強く働いているともいえます。

マズローの欲求5段階説という有名な説があります。人間が生きていくうえでの基盤である生存に必要な欲求が満たされると、段階的に次々と欲求が高まり、やがて「承認」の欲求が出てきます。今はその時代だといえます。おしゃれなカフェでコーヒーを飲む、人気ブランドのバッグを持つ、これも他者から認められたいという承認を求めた行動の一種といえます。人間として人から認められたいという欲求は自然なのですが、これは親子の間でのコミュニケーションにおいても重要なことです。

たとえば、子どもが将来への夢を持ち、それを親に話すケースを考えみましょう。中学生の子どもが「僕は科学者になりたい」と言ったとします。すると、親は即座に「また夢みたいなことばっかり言って……。それより、明日のテスト勉強は終わったの」などと応答することがあります。

一時的であったとしても、子どもの持った夢を否定することはよくありません。このような応答を受けると、子どもは親との対話において「話す→否定される」というイメージが頭の中に出来上がってしまい、自分の夢はもちろんのこと、日常の些細な出来事についても話さなくなる可能性があります。

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