「ハリー・ポッター」根強い人気を誇る本当の理由 「古代神話ストーリー」と同じ構図!その中身は

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古い時代の神話が持つ「魔法」のような構造とは(写真:アメリ勘太郎/PIXTA)
陰謀論、フェイクニュースなど、SNSのような新しいテクノロジーが「ストーリー」を拡散させ、事実と作り話を区別することが困難になりつつある現代。
このたび上梓された『ストーリーが世界を滅ぼす──物語があなたの脳を操作する』を、佐々木俊尚氏が読み解く。

交わらない「2つの世界」

インターネットにせよマスコミにせよ、現代のメディアにあふれる情報は分断が激しく進んでいる。「フェイクニュースに気をつけよ」「ファクトチェックが大事」とさかんに言われるが、もはや何がフェイクで何がフェイクでないかという判断基準でさえ曖昧になってしまっているのが2022年の現実である。

『ストーリーが世界を滅ぼす──物語があなたの脳を操作する』(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら。楽天サイトの紙版はこちら、電子版はこちら

福島第一原発事故をめぐる情報は、そういう「曖昧さ」の典型的なケースである。

たとえば、福島の子どもたちに甲状腺がんがたくさん見つかっているという情報がある。福島県が18歳以下の県民に甲状腺がんの検査をおこなったところ、多数の患者が見つかったというのは間違いない事実である。だから「福島の子どもたちに甲状腺がんがたくさん見つかっている」というのはフェイクニュースではない。

しかしこれについては、他地域と比べても福島県のがん発見率は変わらず、これは過剰検査によるものである指摘が医療の専門家から多く出ている。「たくさん見つかっている」のは事実だが、「多発している」と捉えるのは誤りであるということだ。

しかし新聞やテレビでは、事故由来の甲状腺がんが増えているとほのめかす報道が相変わらず多い。そしてこれは新聞やテレビなどのマスコミだけでなく、インターネットにもそういう個人の発信が大量にある。試しに「福島 甲状腺がん」でグーグル検索すればわかる。検索結果上位に並んでいるのは、そういう記事ばかりだ。

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