「ハリー・ポッター」根強い人気を誇る本当の理由 「古代神話ストーリー」と同じ構図!その中身は

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この2つの世界は、もはやまったく別の島宇宙になってしまっている。日本社会の大多数が同意できる事実というものが、もはや存在していないのだ。ストーリーは2つに分離してしまっているのである。

「善と悪の戦い」という古い神話の構造

こういう局面は、いまやいたるところで目にする。悲劇的に暗殺された安倍元首相の外交について評価もそうだ。「自由で開かれたインド太平洋」構想などの理念は西側諸国では強く支持され、国内の安全保障専門家でも高く評価している人は多い。しかし左派クラスタからは「戦争をしようとしている極悪人」「ファシスト」などと非難されてきた。まったく別の人物、別のストーリーを見ているかのようである。

同じように新型コロナ禍でも、ロシアによるウクライナ侵攻でも、何か重大イベントが起きるたびに繰り返され、日本社会はストーリーによってズタズタに分断されてしまっている。それらのストーリーに対して「それはフェイクニュースだ」「事実ではない」と批判しても、まったく有効ではない。

なぜか。本書のこの説明が的確だろう。「陰謀物語は、それを否定するエビデンスがことごとく信者の総意あふれる再解釈によって肯定するエビデンスにされてしまうことでよく知られる」。そしてこのような思考は、宗教の原理主義と同じようなものであるというのだ。

神話をはじめとする宗教的な物語は、わたしたちが先祖から受け継いだ本能のようなものに根ざしている。『ハリー・ポッター』や『スター・ウォーズ』のような物語がいまも高い人気を誇るのは、それらが神話的な物語の骨格を持っているからだというのは以前から指摘されている。

わたしたちはいまも、古い時代の神話にとらわれているのだ。そしてこれら神話が、実は現代社会に悪影響を与えているということを、本書は実に鮮やかに指摘している。

古い神話は「善と悪の戦い」というような構図で描かれていることが多い。なぜか。本書はこう説明している。──太古の昔の狩猟採集時代は、共同体主義と平等主義という特徴を持っていた。たとえば「仲間を結束させることはなんでもせよ」「仲間割れの元になるようなことはするな」「分断の種をまくな」「自分の分け前以上を独り占めするな」。

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