5歳児には機能的固着が見られないのは、大人の世界を支配している決まりごとをまだ知らないからだ――たとえば、「壁は壁であって、クレヨンで絵を描くためのキャンバスじゃない」とか、「犬はペットであって、仔馬のように乗るものじゃない」とか、「豆は食べ物であって、鼻の穴に詰めるものじゃない」とか。
ところがみんな大人になると、物の用途に合ったふつうの使い道しか思いつかなくなってしまう。
画びょうの入った箱が、まさかロウソクを置く棚になるなんて。
この問題を解くに当たって、ユーモアが参加者たちの能力にどの程度の影響を及ぼすかを調べるため、実験前、半数の参加者にはとくに感情を呼び起こさないビデオを観せ、もう半数の参加者にはユーモアのあるビデオを観せた。
その結果は驚くべきものだった。ユーモアのあるビデオを観た人たちのほうが、正解にたどり着いた人数が2倍も多かったのだ。
彼らは笑ったせいで頭がよくなったわけではなく、笑ったことで機能的固着を克服しやすくなり、新たなつながりや連想を思いつきやすくなったのだ(多くの場合、それこそ創造のプロセスの核心だ)。
職場で重視されるのは創造力と水平思考
ロウソク問題は一見、ささいなことに見えるかもしれない。しかし、作家のダニエル・ピンクが述べているとおり、こうした心の柔軟性は非常に重要だ。
とりわけ変化の激しいグローバル経済においては、ルーティン化した業務は格安業者を使ったほうが安上がりだし、AIのほうが仕事が速い(しかも出来がよい)ことを考えると、外注やオートメーション化がこれまで以上に容易になるからだ。
こんにちの職場では、右脳タイプの創造力と水平思考〔既成概念にとらわれない思考〕が非常に重視される。
私たちはつねになんらかの「ロウソク問題」に頭を悩ませているが、勝利を収めるのは、壁にクレヨンで絵を描くような人たちなのだ。
ユーモアを発揮しようとすると、ただのブレインストーミング中とは比べものにならないほど、脳の創造を司る領域が活性化する。