でも、私はこの新人社員の質問は、とても本質をついていると感じました。そこで、ほかの管理職研修でも参加者の方々に「なぜ目標を達成しなくてはいけないと思いますか?」と、同様の質問をしてみました。
・会社に属している以上、貢献するのは当たり前だから
・達成感を感じて、仕事を楽しくするため
などが、回答の主なものです。ほかにも、「なんででしょうね?」「皆やっているからですか!?」といった回答もありました。
結局、目標を掲げて達成する理由が従業員たちにはほとんどない、というのが実際のところです。事業の成長は経営者にとっては最重要課題であったとしても、多くの従業員はあまり興味がありません。事業成長はあくまでも、経営者の都合です。
売り上げが伸びたからといって、短期的な成果によって簡単に給与のベースアップはできないものです。会社としてできることは、業績連動賞与のような形でしょうが、金額にするとそう大きくはないのも実情です。つまり、トップダウンで一方的に中期経営計画をつくっても、私がたくさんの企業を見てきた経験からいうと、あまり意味はないということなのです。
では、業績をアップしたい会社や経営者が中期経営計画を立てて、社員たちのモチベーションを上げていくにはどのようにすればよいのでしょう。社員を巻き込んでいくには、バスの行き先を経営者が勝手に決めるのではなく、バスに一緒に乗っている社員に確認する。すなわち聞くことです。
皆の意見を聞くなどというと、何だかリーダーらしくないとか、頼りないと感じる経営者もいます。サーバントリーダーという言葉をご存じでしょうか。アメリカのマネジメント研究・開発・教育を行うロバート・グリーンリーフが提唱したリーダーシップ論です。
サーバント(servant)とは使用人や召使いをいい、サーバントリーダーとは組織に奉仕するリーダーという意味です。カリスマ性や強いリーダーシップがあるわけではないのに、組織が成長し部下がやる気になるのがサーバントリーダーです。
「満足度調査」ではなく「意識調査」を
社員の意見を聞くために、会社や仕事、上司などに対して、どのように感じているのかについてアンケート調査を行います。
1つだけ注意しておきたいのは、「満足度(ES)」アンケートではなく、「意識」アンケートにするという点です。
よく、魅力ある職場づくりのために、従業員のESアンケートを実施しましょうという話はありますが、「満足度」というバイアスがかかってしまい、要求や要望、願望ばかりの回答になってしまうのです。また、アンケートに回答した後に、自分が期待するような(満足度が上がるような)改善がされないと、かえって不満を募らせることにつながってしまいます。
「意識」というニュートラルな言葉を使ったほうが、「どう感じているのか?」についての率直な声を集めることができます。たった一言の違いですが、集計されるアンケート結果は大きく異なるものとなりますので、十分注意してください。
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