「いざとなったら残業」の考えが人を無能にする訳 企業にひそむ「多忙はエライ」という古い価値観
実際のビジネスの現場では、従業員の時間を守るためにどのような取り組みがなされているのだろうか。2012年より株式会社ワーク・ライフバランスのコンサルタントとして、さまざまな企業の働き方改革を支援してきた堀江咲智子氏が解き明かす。
根強く残る「長時間労働は美徳」という価値観
多くのビジネスパーソンにとって、『タイム・スマート』に記されているいくつもの「タイム・トラップ」、時間貧乏を引き起こす「罠」は大いに思い当たる節があるのではないでしょうか。
デジタルツールが進化してコミュニケーションが取りやすくなったり、どこでもアクセスできるようになったりといった利便性は高まりましたが、集中しているときにメールやチャットツールの通知が届いて、時間が分断されてしまう。仕事でもプライベートでも、自分で時間をコントロールしていく重要性は、今後もますます高まっていくでしょう。
私はさまざまな企業で働き方改革のコンサルティングを行っていますが、日本ではまだまだ時間に関する課題が多いと感じます。経営者や管理職の方は、自分の時間の多くを仕事に費やしてきたからこその成功体験があります。いわば「企業戦士」です。話を聞いてみると、育児にまったく関われなかった後悔があったり、報酬を上乗せして優秀な人材をつなぎ止めておくことに限界を感じていたりするのですが、とはいえ成功体験に基づく価値観をそう簡単には変えられない。ワークライフバランスの重要性はわかるけれど、実感がともなわずピンと来ないのです。
先日も、ある建設業の方々にアンケートをとりました。「長時間働く人は、あなたにとってどういう人ですか」という質問に対し、「忙しいことはいいことだ」というように、ポジティブな意見が多く見られました。本書が指摘する「ワーキズム」です。
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