「いざとなったら残業」の考えが人を無能にする訳 企業にひそむ「多忙はエライ」という古い価値観
私自身、前職は製造業なのですが、当時は長時間労働を地で行くタイプでした。「今これをやっておかないと明日に間に合わない」と思い込み、ずっと会社に残っていたのです。ところが上司から、「そんなことをしていていい商品が本当に出せると思っているのか」と厳しく言われました。お客様のニーズや新しい技術を知るための時間もないまま、製品開発に携わっていたわけですから「そうか、自分の学びの時間も含めてタイム・コントロールをしていかなくてはいけないのだ」と、このとき気づきました。それが今のコンサルタントの仕事につながっています。
日本企業の「忖度文化」が仕事を増やす?
もう1つ、日本企業には「ステータスとしての多忙」という価値観がまだ残っています。大事なのはそれに対する気づきがあるかどうかなのですが、本書には分析や評価を行うツールキットが各章についているので、とても役立つのではないでしょうか。
たとえば1日の活動を書き出してみるワークシート、私たちもこうしたツールをコンサルティングで使っています。予定と実際に費やした時間に着目し検証を続けていくと、自分の時間の見通しの甘さや仕事の組み立て方の改善点が見えてきます。1カ月後にあらためて見直してみると、営業部にもかかわらず営業の時間がわずかしかなかったというケースもあります。すると、本来業務ではない会議の時間を減らそうといった改善もできるようになるわけです。
さらに、よく経営者や管理職の方にお伝えしているのは、「本当に減らせる業務はないか」ということです。もう一度、真摯に見直してみてほしいのです。
日本の多くの企業はまだピラミッド型で、経営陣のひと言が大きなインパクトを与えます。たとえば経営会議の資料の数字も、常務は「1円単位で書かなくてもいいよ」と部下に言う。それを聞いた専務は「僕は1円単位までわかるほうが安心だな」とつぶやく。すると作成担当者まで下りてくる頃には、「資料は常務用と専務用と2種類作れ」ということになってしまうのです。当の本人がはっきり指示していなくても、ささいなひと言で業務が雪だるま式に膨らんでしまうというわけです。
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