日本がロシアの研究レベル低下から考えたい難題 世界が「学問の自由」を守り続けるのは一体なぜか

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研究開発イメージ
日本の大学環境もロシアのようになりかねない?(写真:cassis/PIXTA)
今のウクライナとロシアの大学から日本の課題を考える全3回連載。第3回はロシアの大学の地位低下と、その状況を踏まえ、日本の大学の現状について話を進めます。

研究の自由がなくなると

ロシアにプーチン大統領が誕生してから、研究の統制が強まります。

第1段階は、政府の方針に沿わない研究者や機関に少しずつ圧力をかけ始めました。自由な議論を行うアカデミック界で、政府の外交方針などに従わない学者を標的にします。公的な機関での身分を外し、地位を下げ発言を押さえます。そのうえで、研究者に政策の過ち等を指摘させないように仕向けます。

第2段階は、財政的な締め付けです。ソ連邦の崩壊以来、すでに大幅に研究費が削減されていました。さらに政府の意向に合わない研究は支援を打ち切ります。この大義に使われたのが、2012年の教育改革です。「重要な研究への重点的予算配分」とします。

ところが、この方針や配分の決定は政府役人で、研究には疎く「俯瞰的な見方」はできません。テーマの重要性よりは、方針に合う研究の援助が任務で、それ以外は予算から排除されます。

第3段階は、研究の自由の大幅な抑制で、研究そのものを妨害します。ロシア政府の方針に沿わない研究者は雇用されなくなります。また、西側に関係のある研究機関は閉鎖されました。

各大学のトップは、研究実績のある研究者の代表ではなくなりました。政府にとって有能な実務家が、高給を得て管理や経営に当たっています。彼らの主な役目は、政府の目標達成と、不穏分子の粛清です。

今では、海外の学会や雑誌に、研究成果を発表する際は、事前に内容の申請を受ける必要もあります。

これらの政策がアカデミック界にどのような影響を与えるのでしょう。

ソ連邦解体の1990年に比べ、研究者数は約3分の1に減りました。まず世界レベルの研究者が、より自由な環境の海外に流失します。また、経済的に厳しい研究職をやめ、実業界に活躍の場を求める者も増えます。独自の研究をするという夢を描けない道を選ぶ若者も減りました。

大学統制の結果は、研究レベルの著しい低下となります。1990年代は、最高レベルの論文の世界シェアは6位でしたが、次第に順位を下げ、2012年には15位まで落ちてしまいました。また、かつて世界トップレベルの大学がありましたが、2016年には100位以内の大学はなくなりました。

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