ロシアの大学「劣化」が背負う未来への重い代償 政権に迎合せず客観的に議論を行うことは困難に

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ロシアの指導者と大学事情から学問の自由を考えます(写真:Andrey Rudakov/Bloomberg)
今のウクライナとロシアの大学から「学問の自由」を考える全3回連載。第2回をお届けします。

レベルが高かったロシアの大学

シベリアのバルナウルにある教育大学の教授陣にお世話になって以来、交流を続けていました。調査協力のお礼には、いつも「本が欲しい」と言います。

ところが次第に連絡は少なくなり、今年に入るともう返信が来なくなってしまいました。

シベリアの大学の先生方と交流が始まったのは、1999年のロシアが混乱している11月でした。エリツィン元大統領がチェチェンの独立問題で苦闘し、後を引き継いだプーチン氏が成功をおさめ大統領になる、少し前です。

シベリアにあるバルナウル教育大学に国際学会のプレナリー講演者として招待されました。これは、学会の初日に参加者全員の前で、代表として講演する名誉あるものです。望外の知らせに、急いで渡航手続きを進めました。

<プレナリー(Plenary)」は全員が出席する全体会議という意味。 大きな学会では、同時に複数の発表が行われることが多いが、プレナリーの時は大ホールを使って、その発表だけが行われ、同じ時間に別の発表は行われない>

雪が舞い散るバルナウルの駅には、招待してくれた教授のディアナと、若手教員のカーチャが満面の笑顔で迎えてくれました。カーチャはアメリカで博士号を取得し、戻ってきた優秀な研究員です。

学会が終わると、大学で講義をしたり教材作りのプロジェクトを手伝ったりすることになっていました。ここはシベリア中の優秀な学生が集う教育系の大学です。厳しい選抜試験で選ばれた学生たちは全員、授業料と居住費は免除です。理由は、彼らが将来を担うので、国が補助するのは当然だということでした。

学会の開会式には、シベリア中の研究者が集うようで、大きな会場は満員でした。私のプレナリーの講演では、カーチャが英語をロシア語に同時通訳をしてくれます。いつものようにユーモアも混ぜたのですが、会場からの笑いに時差があります。

私が参加した会場は、英語による発表ですが、どの研究もレベルが高くロシアの研究力の高さを実感させられます。

実は私の滞在先は、学生寮でした。ここは、キャンパスの外にあり、学会や授業がある建物から歩いて10分ほどです。学生寮の建物は古いのですが、暖房は温かく毎日よく眠れました。食事は、学生寮の食堂で、彼らと同じテーブルです。学生は、ほぼ全員が寮生活で、食事も支給されるので、基本的な生活には困らず、学問に専念できます。

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