そこに登場したのがチェチェンの独立を阻止し、成功を収めたプーチン大統領です。彼は、強権をもって中央集権を推し進めます。それまで利権を独占していた勢力を一掃しました。社会制度を整え、徐々にロシアに秩序をもたらしていったのです。また、同時に豊富なエネルギーを活用し経済を活性化していきます。
これらの結果、経済の成長率は5~8%にも達し、一般の人々の生活も次第に良くなりました。このような状況が20年以上も続くと、「プーチン大統領の言うとおりにしておけば良い」と、洗脳されていっても、おかしくないのかもしれません。
ロシアの大学におけるリーダー輩出の劣化
ただ、経済状態が良くなっても、大学などの高等教育機関の充実は後回しにされます。前述のように、研究の国際競争力は落ちていきます。優秀な研究者の中には、ロシアを後にする人も増えていきました。
このように、ロシアの大学は予算削減による書籍の欠乏、ネットによる研究の統制、そして優秀な研究者の流出により、劣化が進むことになります。
大学の本来の姿である、政権に迎合することなく客観的に議論を行うことは困難になってきたと思います。これが続くと、残念なことに健全な将来のリーダーを輩出するのは容易でなくなります。結果的に、独裁的なリーダーが長期にわたり権力を持つには都合がよい効率的な状況となります。
前回の記事(キーウ大学の真っ赤な建物に込められた深い意味/9月2日配信)で述べたように、ウクライナでは、ソ連やロシアの強力な圧力に対抗すべく、大学の門の内側で、将来を見据えた議論が続けられていました。一方、ロシアでは、30年以上続くアカデミックに対する無策が、体制側の立場を有利にしているのかもしれません。
カーチャとの連絡は、次第に途切れ途切れになってきました。連絡しても、遅れ気味で、差しさわりのない簡単な返信が届くだけでした。まるで、第三者に、閲覧されていることに気づいているようでした。そして、ウクライナ侵攻の2月以降は途絶えました。
大学の名前はアルタイ州立教育大学へと変わりました。大学のホームページには不正の撲滅という欄もあります。大学トップの収入や財産が、わざわざ記載してあります。彼らは、他の機関の要職も兼ねており、政府と深い関係のある人物です。大学自治より、中央の意向を優先してもおかしくありません。
現在、この大学のホームページは西欧の大学と遜色なく、見栄えもいいものです。
ただ、1つ気がかりなのは、「教職員」のページは、空白になっていました。
(第3回=9月16日配信予定に続く)
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