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日本がロシアの研究レベル低下から考えたい難題 世界が「学問の自由」を守り続けるのは一体なぜか

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  • 中谷 安男 法政大学経済学部教授、国際ビジネスコミュニケーション学会理事
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任命されなかった研究者には、少数派の女性や、比較的主要でない分野も方もいたので、結果的に構成員の多様性は改善していません。

このように、今回の問題は正式な手続きがなく、十分な説明がなされていないのです。ロシアで起こった大学研究の統制の第1段階に近いかもしれません。

民主主義は最悪のシステムなのか?

正式な手続きや十分な説明が、なぜ必要なのか、日本もまねて導入したイギリスの議会制民主主義を見てみましょう。この制度では、選挙で選ばれた議員が議題を議会で討議します。この原則は、十分な議論と、多数決による採択です。

第二次世界大戦中のイギリス首相チャーチルは、次のように言っています。

「民主主義は、これまでの制度の中で最悪のものだ。ただし、これまでのあらゆる制度を除けば」

皮肉屋で、ユーモアのあるチャーチルらしい発言です。ほかよりはましだが、システムとして、民主主義は不備があると認識しています。

最大の弱点は、多数決で決めることです。反対側の意見は反映されないため、つねに問題が残ります。また、多数派になった政権政党が、選挙時で国民に説明していない法案などを、数の理論で決定してしまう危険もあります。

これは、とても深刻なことで、数で勝れば、何でも自己都合で変えたり、決めたりできるのです。 

拙著『オックスフォード 世界最強のリーダーシップ教室』でも詳しく解説していますが、多数決の問題を緩和するのに必要なのが、採決前の十分な議論です。新たな議案や、政策の変更を公開の場で、国民にわかりやすく賛否両論の立場からディベートを行います。

この言葉を使い事態を明らかにする、公的な過程を経ることで、主張の正当性や、法律の作成意義、解釈の変更の意図が明確にされます。

議会の代表者は、国民や社会に責任(Responsible)がありますが、これは英語で「質問に答えることができる」という意味です。

チャーチルは、第2次世界大戦の困難な時代も、議会でのディベートや説明を続けました。

「納得するまで話し合い、最後は投票で決める」これが、民主主義の絶対条件だからです。

このようにイギリスでは、最大の弱点の多数決による採択を事前の十分な議論で担保します。

政府や国会が、問題の適切な解決策をとらないため、「議場」でなく、場所が場外に移動します。ネット上で、根拠のない発言が続きました。

例えば、「推薦者の任命をしないのは、学問の自由を制限したことにはならない」です。

これは、なぜ、どのように研究に自由が必要かという根本の問題です。

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【科学の進歩や発展には権力者からの自立が必須】

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