イオン、PB価格据え置きの「やせ我慢」に募る憂鬱 スーパーVS食品メーカー、水面下の価格綱引き
「多少なりともやせ我慢の必要があるのではないか」。流通大手、イオンの岡田元也会長は今年4月、原材料高や円安が進む中での商品の値上げの是非についてこう表現していた。
その岡田会長の言葉どおり、イオンは7月、自社のプライベートブランド(PB)「トップバリュ」の小売価格に関して、カップ麺やマヨネーズなど3品目を除いて当面据え置くと発表した。キャノーラ油に至っては、「トップバリュにふさわしい価格で提供できなくなった」(同社広報)として休売する決断をした。
とはいえ、価格を据え置いた商品も、例外なく原価上昇の影響を受けている。イオンによると、以前は冷蔵車で配送していたおでんのパックを常温輸送に切り替えて輸送コストを削減したり、グループの規模を生かした一括調達で全体の原材料費を抑制したりする「企業努力」を行い、価格維持を可能にしているという。
値上げによって遠のく客足
食品メーカーの自社ブランドであるナショナルブランド(NB)の値上げラッシュが続く中、PBの値上げをできるだけ回避しようとしているのはイオンに限らない。店舗数が過剰とも指摘される国内スーパー業界の競争は苛烈で、価格で競合店に見劣りすれば一気に客を奪われかねないからだ。
値上げによって客足が遠のくのは、データでも裏付けられる。スーパーの業界団体が毎月実施している景況感DI(指数)調査によれば、販売価格の上昇に反比例するように来客数が減少傾向となっているのがはっきり見て取れる。
NBを中心とした値上げによって1品当たり単価が上昇する一方で、買い上げ点数の減少による客単価の低迷もスーパー各社ですでに進んでいる。そこにPBの値上げまで続けば、来客数の減少による業績悪化に拍車がかかりかねない。