イオン、PB価格据え置きの「やせ我慢」に募る憂鬱 スーパーVS食品メーカー、水面下の価格綱引き

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ただ、こうした「やせ我慢」もスーパー側の努力だけでは成り立たない。PBの製造を請け負っている食品メーカー側の協力があればこそだ。

PBを展開する地方スーパー幹部も、「スーパーと食品メーカーは共存共栄の関係だ。イオンのようにほぼすべての価格を維持するのは無理だが、可能な限り値上げをしないよう、お互いに知恵を絞っている」と話す。

食品メーカーは小売り側が求める価格を可能にするため、材料や生産方法を工夫するなどして原価低減を図っている。例えば、パンや菓子を製造する際に使われるバターの含有量を減らすといった対応もある。

しかしこうした関係者による創意工夫だけでは、足元では限界に達しつつあるのもまた事実だ。コスト上昇分の負担をめぐって、PBを販売する小売企業と、その製造を請け負う食品メーカーが水面下で綱引きを繰り広げている。

イオンの売り場。PBトップバリュの食用油
PB「トップバリュ」を前面に打ち出すイオンの売り場。(撮影:尾形文繁、写真は6月時点)

メーカーの本音は「価格転嫁して」

「コスト上昇分は小売価格に転嫁してほしいのが本音だが、メーカー側でも一定程度は負担せざるをえない」。ある食品メーカー幹部は諦め顔でそう語る。

仮にコスト負担を嫌ってPBの製造受託を断ったりすれば、競合他社に受注を奪われるだけだ。そのため、ある程度安値でも請け負わざるをえないという。

スーパー業界の中にも「PBのコスト上昇分は小売り側が負担するのが常識。食品メーカーに一部でも負担してもらうのはおかしい」(地方スーパー幹部)という声はあるが、必ずしもそうはなっていないのが現状なのだ。

食品メーカーにとってPBの製造受託は、自社ブランドとして販売するNBと比べて薄利だ。しかもスーパーの販売現場で、安さを売りにするPBはNBのライバルでもある。NBが値上げを断行する中で、イオンのようにPB価格が据え置かれてしまうと、両者の価格差はさらに広がり、NBはシェアを奪われてしまう。

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