イオン、PB価格据え置きの「やせ我慢」に募る憂鬱 スーパーVS食品メーカー、水面下の価格綱引き

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ある食品メーカー幹部は、「大手スーパーのPBは安さを先導する『逆プライスリーダー』だ」と皮肉る。人気のNBを除けば、多くの商品カテゴリーでPBの比率が高まっており、食品メーカーの苦難が続いている。

だからといって、食品メーカーがPB製造を断るのは難しい。そこには大きなメリットもあるからだ。その1つが、工場の稼働率を上げてくれることだ。製造数量が増えて稼働率が上昇すれば、商品の原価は下がり粗利益率は高まる。仮に製造受託したPB商品の粗利が低かったとしても、そのほかの商品の儲けが増える。

また、スーパーとの関係強化という側面も見逃せない。ある食品メーカー社員は、「PB製造を受託することで、その見返りにNBを置く売り場の棚を広く確保してもらうということも期待できる」と話す。

公取委も目を光らせている

ただ、コスト上昇のシワ寄せが下請けとなる食品メーカーに及びかねない状況に関して、公正取引委員会も目を光らせているもようだ。公取委は、昨今の原材料・エネルギー価格の高騰を受け、円滑な価格転嫁を推進するべく、買いたたき行為などが疑われる事業者の情報提供を各社に求めている。ある食品メーカー関係者によると、公取委から聞き取り調査もあったという。

交渉力の弱い中小メーカーに対し、小売業者が行う買いたたきへの懸念はとくに大きい。別の食品メーカー社員は、「特定のスーパーへの経営依存度が高い中小メーカーなどは、コスト負担を押し付けられることもあるだろう」と話す。

政府は輸入小麦の売り渡し価格を当面据え置く検討に入るなどの対策を進めてはいるが、あらゆる原材料価格の高騰が見込まれる中で、食品価格の上昇は待ったなしの状況だ。スーパー業界でも「春の値上げは前哨戦にすぎない」というのが一致した見方だ。

微妙な力関係でつばぜり合いを繰り広げる両業界。異常事態をどのように生き抜くのか、コスト負担をめぐる綱引きはさらに激しくなる。

井上 昌也 東洋経済 記者

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いのうえ まさや / Masaya Inoue

慶應義塾大学法学部政治学科卒業、同大メディア・コミュニケーション研究所修了。2019年東洋経済新報社に入社。現在はテレビ業界や動画配信、エンタメなどを担当。趣味は演劇鑑賞、スポーツ観戦。

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中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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