病棟の看護師や介護士に女性は多いが、入浴や排泄の介護では力のある男性が1人は入るようになっている。また、夜勤で働ける女性が少ないため、男性が介護していたりする状況もある。
岡山さんは、こう続ける。「病院内では患者は弱い立場です。そのため、声を上げることで、その後、不利な状況に置かれることを恐れるという声も聞きます」。
もちろん、すべての筋ジス病棟で、このような日常生活の状況が常態化されているわけではない。だが、プロジェクトの報告書は、患者の声を聞き取ることで、病院の生活状況が医療制度のシステムの要因によることを明らかにした。
職員も患者も感覚がマヒしている
「筋ジス病棟は人里離れた地域の病院にあることが多いため、外部とのつながりが乏しく、患者が外出する機会も少ない閉鎖的な空間です。そのため、第三者から見ると虐待と思われるような行為や状態に対して、職員も患者も感覚がマヒしている様子が垣間見えます。国が主導して、病院内の処遇改善と、患者の地域移行の促進を抜本的に進めていくことが不可欠です」と、岡山さんと大藪さんは指摘する。
病院側にも、患者を地域移行させやすい診療報酬加算などが設定されることも取り組みとして必要だろう。
今回は筋ジス病棟を取り上げたが、介護療養型医療施設や介護施設でも、同様の生活状況が起きているとも聞く。
JCILでは、障害のある人とない人が協働して、重度障害のある人が地域で暮らすための準備や支援をしている。
障害のない人が部屋を借りたり、24時間重度訪問介護を担うヘルパーを探したり、市役所に引っ越しのための転居届や障害者福祉サービス、福祉用具などの申請を出したり、訪問診療や訪問介護等の準備を整えたりすることを担当し、障害のある人は当事者の悩みや不安を聞きながら、地域で暮らすための心構えをアドバイスする。
国連の障害者権利条約第19条では、「障害のある人は障害のない人と同じように、どこで誰と生活するかを選択できること」および「特定の施設で生活する義務を負わないこと」と規定されている。
必ずしも、地域で一人暮らしをすることだけが幸せとは限らない。だが、施設や病院で生活している重度障害者の中には「もう、自分はここしか暮らす場所がない」「家族に迷惑をかけたくない」とあきらめている人も多いという。
このため、「医療的ケアが必要でも、重度訪問介護(24時間連続)を利用しながら、地域で一人暮らしができる選択肢を知ってほしい」と大藪さんと岡山さんは話している。
⋆回答者の属性:回答者数は58人(男性約8割、女性約2割)、年齢は20~78歳(中央値は42歳)、障害支援区分は区分6(介護介助の必要度6段階のうち一番重い)が約65%、人生の半分以上入院している人は約4割(2019年2月~2020年9月)
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