しかし、なぜ、こんな複雑な状況から、一転して両社合併という結論に至ったのだろうか。
実は、1人の女性リーダーの存在が大きな役割を果たしたと言われている。その人物とは、柳青氏。2014年7月に「滴滴打車」のCOOとして入社。今後、合併会社の総裁に就任する予定の人物だ。
1978年生まれの柳青氏は北京大学卒、ハーバード大学大学院を経て、ゴールドマンサックス執行役員を務めるなど、華々しい経歴を持つ。その後、「滴滴打車」に入社し、COOを務めている。実は、あのパソコン大手Lenovo(連想集団)の創業者である柳伝志氏の娘である。
柳青氏は、滴滴に入社後、まず多額の資金調達を実現した。正確なところは公開されていないので分からないが、私の感覚では、昨年の段階では、どちらかというと「快的打車」の方が、「滴滴打車」より勝っており、使う機会は明らかに快的のほうが多かった。しかし、年末頃から「快的打車」では、タクシーが急激に捕まらなくなり、「滴滴打車」ばかり使うようになったように記憶している。
ここからは筆者の推測になるが、おそらく柳青氏は調達した資金を投じて、「滴滴打車」のシェアを一気に引き上げ、有利な形での合併交渉に話を持ち込んだのではないかと思われる。
なぜそう言えるかといえば、キャンペーンをやっても一時的なシェア奪還に過ぎず、今さら巨額の資金を投入する意味は無かった。合併というシナリオがあったからこそ、シェア奪還に動いたのではないだろうか。「快的打車」と「滴滴打車」のCEOは、二人とも、自分たちが「代理戦争」に巻き込まれていると不満に思っていただろうし、明確なビジョンを持った第三者が入れば、あり得る展開だった。
次のシナリオも練られているかもしれない
ニュースでは、これは22日間で決めたスピード合併と言われているが、彼女の中では、用意周到に計画されていたシナリオのもと、計画されていたのではないかと私は思う。
そう考えると、気になるのは、そのシナリオの続きだ。彼女の父が経営するLenovoは、2010年に「神州租車」というレンタカー業界トップの企業に出資している。これも一つのシナリオで動いているとしたらどうなるだろうか。
配車アプリという「天王山」を制したのは、3大IT企業ではなく、彼女自身だったのかもしれない。だとすれば、これからの彼女の動きには目が離せない。
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