もはや中国で生きていく必需品となっている、これらの配車アプリだが、2月14日のバレンタインの日に、ライバル関係にある2つのアプリを運営する会社が合併するという発表があった。
私は、正直、以前から2社のキャンペーン合戦を不毛な泥仕合だと思っていた。しかし、犬猿の仲の2社が合併するなどということは、全く想像もしなかった。なぜ、こんなことが起きたのか。春節(旧正月)で情報が足りない中ではあるが、その裏側にあるものを考察してみた。
顧客獲得戦争の不毛
まず、どこが泥仕合の状況なのかを振り返ってみたい。両社が運転手へのキャッシュバックや顧客へのクーポンに費やした金額は、数百億円から1000億円規模になると言われており、以前には、タクシー代を乗客の代わりに”全額支払う”とい うキャンペーンまでやっていた。しかも、運転手も消費者も、2つのアプリを両方使っており、キャンペーン条件の良い方を使う。要は、カネをつぎ込んだときだけ一時的にシェアが上がるが、やめれば元に戻るシーソーゲーム。シェアをとりたいのは分かるが、まさに、息を止めての殴り合いといった様相で、完全な消耗戦になっていた。
なぜ、こんな消耗戦を続けたのだろうか。それは、2社の資本関係を見れば分かる。「快的打車」の大株主は電子商取引最大手のアリババ、対する「滴滴打車」の大株主はSNS最大手のテンセント。IT業界の両雄が、まさに「代理戦争」の様相でこの分野で激突していたのだ。
料金の決済を、自分たちの決済サービスに引き込む入口として、また、タクシー配車からハイヤービジネスにつなげる戦略と思われるが、お互いの面子もあり、不毛と分かりつつも、ひくことの出来ない泥沼の消耗戦に陥っていた。
また、アリババ陣営「快的打車」には、日本のソフトバンクが出資、テンセント陣営「滴滴打車」には、シンガポールの国家ファンドが出資を行っている。もはや、自分たちだけの都合では引けない。
さらに、中国3大IT企業のもう1つ、検索最大手バイドゥは、米国のUberに出資を行い、中国での展開を助けている。このことからも分かるように、中国IT業界において、この配車アプリという分野が、まさに今後の覇権を占う「天王山」だったのだ。
ちなみに、この2社の合併により、配車アプリは事実上の一強支配になるため、独禁法の審査が気になるところだ。しかし、現状、配車サービス自体の収入はゼロである上、タクシー・ハイヤー全体の市場から見ると絶対的な地位にあるとは言えない。以前に動画サイトの2大企業が合併したときの前例もあり、審査対象にはならないと見込まれている。
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