「空気」を読むのが得意なのは日本人だけだろうか。いやいや、そんなことはない。中国人もしっかり空気を読む。そして、実は日中関係の行方はこの空気にかかっているように思う。そこで、今回はそんな空気、ムードの話を書いてみたい。
2012年9月、日本政府の尖閣諸島国有化に端を発する、大規模な反日デモが中国全土に広がっていた。ちょうどその頃、タクシーに乗った私の顔をじっと見て、運転手が真剣な顔でこう言った。
「あなたは日本人か?」――正直、ぞっとした。ちょうど3日前に、居酒屋で日本人が刺されて負傷した事件があったし、そのほかにも日本人が暴行を受けたという話をいくつも聞いていたから。
「日本人だ」と答えたら・・・
相手は区別が付かないから、日本人だと言わずに韓国人だと答えるようにしているという人もいた。しかし、そういう嘘をつくのはイヤだと思い、思い切って言った。
「日本人だ。何か問題があるか?」
次の瞬間、予想に反して、彼はニコッと笑い、私の肩をボン!とたたいて、「そうか、やっぱり日本人か!お前ら、大変だなぁ。でも、俺は、日本人は嫌いじゃない。俺にお金を払ってくれたら、みんな好きだよ。今、中国人にはそうは言えないけどね」と冗談ぽく言った。
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