総崩れの化粧品メーカー「ドル箱低迷」の深刻理由 大手3社下方修正、中価格帯ブランドの苦戦鮮明
「日本の市場回復が遅れ、中国のロックダウンという想定していなかった事態も起きて成長が鈍化した」
決算会見に臨んだ資生堂の魚谷雅彦社長の表情は、終始厳しかった。
7月末から8月上旬、資生堂、コーセー、ポーラ・オルビスホールディングス(HD)の化粧品メーカー大手3社が発表した2022年12月期中間決算。その内容は、まさに化粧品業界の苦境を示したものだった。3社そろって、通期の業績予想の下方修正に踏み切ったのだ。
資生堂は売上高が期初計画比0.5%減の1兆0700億円、営業利益は同35%減の400億円、ポーラ・オルビスHDは売上高が同8.6%減の1700億円、営業利益は同33%減の117億円にそれぞれ修正。高価格帯の「コスメデコルテ」が好調だったコーセーは2社と比べると修正幅が小さく、売上高は2930億円を据え置き、営業利益を同9%減の200億円とした。
上海ロックダウンよりも深刻な国内事情
下方修正の理由の1つが、上海で行われた大規模なロックダウンだ。
2022年3月末~5月末の2カ月間、外出制限が行われた上海市では、人流だけでなく物流も大きな制限を受けた。上海は国際物流の拠点で、日本から輸出した商品が集まる。そのため大手EC(ネット通販)サイトのTモールやJD.comで注文を受けても発送できない状況が続き、キャンセルが相次いだ。
とくに中国の2大ECセールの一角である「618セール」で被った痛手は大きかった。例年は6月1日から同18日までのセール期間に備え、十分な在庫の確保などを事前に済ませておく。それが今年は物流が制限を受けた影響で準備がままならず、売り上げを思うように伸ばせなかった。
ただ、上海のロックダウンは一過性の外部要因にすぎない。それ以上に今回の決算で深刻さが露呈したのが、国内事業の不振だ。
国内の化粧品市場は2020年以降、インバウンドの蒸発やマスク着用などにより、長い冬の時代に突入した。市場調査会社・インテージのデータによれば、2022年5月から回復基調に転じてはいるものの、2019年の水準には遠く及ばない。
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