豪BHPの無理難題に翻弄される鉄鋼メーカー
国内の鉄鋼大手が、資源メジャーの“ごり押し”に頭を抱えている。豪BHPビリトンは、JFEスチールなどに対し、原料炭の価格改定交渉を、現在の3カ月ごとから1カ月ごとにするよう通告した。
原料炭は、高炉の中で鉄鉱石から鉄分を取り出す際、酸素を取り除くために使われるコークスの原料だ。鉄1トンを作るのに鉄鉱石1・5トン、原料炭0・8トンが必要になる。
BHPの狙いは、資源高のメリットを最大限に享受することだ。原料炭の価格は2003年まで1トン当たり50ドル前後で安定していたが、世界最大の石炭生産国である中国が、需要拡大で輸入国に転じたことで急騰。今年1~3月期は225ドルまで上昇しており、足元のスポット契約では300ドルも飛び出した。「(BHPにとって)つねに割高なスポット価格に連動させれば、中期で考えると儲けは大きい」(電炉大手幹部)。
実質的な値上げになるため、鉄鋼メーカーは猛反発。日本鉄鋼連盟の林田英治会長は「到底受け入れられない。断固反対する」と息巻く。
が、原料炭はBHPや英豪リオティントなど5社で世界の海上貿易量の6割を占める寡占状態。中でも、BHPはシェア3割近くを握っている。片や国内では、最大手の新日鉄ですら粗鋼生産量の世界シェアは3%にも満たず、鉄鋼メーカーが抵抗できる余地は少ないというのが業界関係者の見方だ。
「BHPは運搬船ごとの契約や四半期契約との組み合わせを提案するが、四半期分は割高にするなどして、月次契約を浸透させるのではないか」(資源に詳しい大和証券キャピタル・マーケッツの五百旗頭治郎シニアアナリスト)。要求を飲めば、他の資源メジャーも追随する可能性がある。
難航する価格転嫁
そもそも原料価格の改定が3カ月に1回となったのは10年4月。わずか1年前の話だ。それ以前は年に1回の交渉だったが、資源メジャーが期間の短縮を要求。価格交渉力で圧倒的に劣る鉄鋼メーカーは突っぱねられなかった。