豪BHPの無理難題に翻弄される鉄鋼メーカー

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 その一方で、原料高を鋼材価格に転嫁しようにも自動車メーカーなど主要ユーザーとの交渉は難航。年1回から半期に1回の価格改定に変更したのが精いっぱいで、その後の価格引き上げも十分には進んでいない。原料炭の価格が下がらない中で月1回の改定となれば、採算が今まで以上に悪化するのは間違いない。

原料炭の高騰には、もう一つ理由がある。

世界有数の石炭産出地でBHPの本拠でもある豪州で、10年12月に起こった洪水被害だ。この影響で、同社はフォース・マジュール(不可抗力)を宣言。契約していた量を出荷できなかったため、需給が逼迫。その結果、鉄鋼メーカーはカナダ、米国、ロシアなどで値段の高いスポット価格の原料炭を手配する羽目になった。BHPに“貸し”を作ったという思いがある矢先の厳しい要求に、メーカーから怒りの声も聞こえる。

権益獲得は道半ば

原料の安定調達のためにに、鉄鋼メーカーが進めるのが炭鉱や鉱山の権益獲得だ。

新日鉄とJFEは3月2日、豪州東部にある年産約330万トンの炭鉱の権益を追加取得。出資比率をそれぞれ3%強から6%弱に引き上げた。ほかにも、新日鉄は昨年10月に初となるアフリカの原料炭権益を取得。JFEも12年の操業開始を目標に豪州の炭鉱の開発を進めている。

とはいえ、資源メジャーに依存する状況がすぐに変わるわけではない。原料炭だけでなく鉄鉱石でも状況は同じ。スポット価格は1トン当たり180ドルを超え、最高値を記録した昨年度を上回る勢いで推移している。

問題はそれを販売価格に反映できるかだ。すでに、鉄鋼メーカーからは1トン当たり2万円くらい(約2割増)の値上げが必要との声が上がる。主要ユーザーとの交渉はこれからだが、一筋縄ではいかないだろう。原料高と難航する価格転嫁の板挟みに苦しむ構図がしばらく続きそうだ。

(山内哲夫 =週刊東洋経済2011年3月12日号)

※記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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