自死した17歳バレー部員、遺族が納得できない訳 暴言指導の顧問に処分は下るも、残った課題

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筆者は長年、部活動における暴力・暴言を原因とした中高生の自死について取材してきたが、翼さんの件のように、処分が下るまでに数年を要したり、処分自体がなされなかったり、人の死が軽く扱われるケースが多いと感じてきた。こうした痛ましい事件が繰り返されないよう、本稿では翼さんの事件の経緯も振り返りつつ考察したい。

大阪の市立高校でバスケットボール部員だった男子生徒(当時17)が、顧問の暴力や理不尽な扱いを苦に自死してから今年で10年を迎える。翌2013年には、日本スポーツ協会など5団体が「スポーツ界における暴力行為根絶宣言」を採択し全国へ通達。文部科学省を筆頭に中央競技団体が「二度とスポーツの指導現場でこのようなことがあってはならない」と再発防止を誓った。

ところが、2018年に翼さん、2019年に茨城県の市立中学卓球部、2021年1月に沖縄県の県立高校運動部と、報じられている主な案件だけで3人の中高生が、部活動問題が理由と思われる内容で自死している。

さらに言えば、大阪の事件は顧問による有形の暴力があったものの、その後の3人は明確な暴力は受けていない。いずれも、暴言や理不尽な扱いに苦しんだ末に命を絶っている。

茨城県の市立中学卓球部のケースでは、顧問が減給10分の1(9カ月)の懲戒処分。沖縄県の県立高校のケースは、教育委員会が第三者委員会で顧問の指導が自死要因として認定、亡くなった半年後の7月に顧問を懲戒免職処分にした。

言葉の暴力で免職を決めた岩手県の決断は大きいが…

当時、記者会見で語る父親の新谷聡さん(撮影:梅谷秀司)

言葉の暴力という目に見えぬ傷を負わせた教員に対する懲戒免職は沖縄が初めてで、これに続いて処分を出した岩手県の姿勢は評価できるだろう。

とはいえこの一件、他府県で起きた運動部活の自死事案とは大きく異なる点がある。A氏は2015年に不来方高校へ赴任する際、前任校だった盛岡一高での暴力指導を元バレー部員に訴えられ係争中だった。それにもかかわらず、そのことを新谷さんら保護者や部員たちが知ったのは翼さんが亡くなってからだ。

つまり、当時A氏を任用した学校側はこの事実がありながら、A氏を体育科もある県内屈指の男子バレー強豪校の顧問にしたのだ。

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