「性教育」を毛嫌いする日本が抱えている大問題 女性の権利に対する意識低下につながっている

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「コンドームは、けっこう皆知っていますね。低用量ピルも4、5年前は2割ぐらいしか知らなかったんですが、最近は報道が多いので知っている生徒が増えました。日本では手術で中絶することを知らない生徒が6割近くいます。手術可能な時期が限定されていることを知っている生徒になると、20%以下しかいない。私は必ず『時期があるんだ!』と強調します」

授業前は、2人が合意すればセックスをしてもいいと思っていた生徒たちが、授業後は慎重に考えるようになる。正しい知識をもとに適切な性教育を行えば、生徒たちはちゃんと受け止めて考えるようになるのだ。

「寝た子を起こすな、とよく言いますが、上手に起こしてあげることが大事。放置していたら、AVなどで学ぶしかない」と樋上氏。また、「授業で同級生たちの意見を聞くことは、教師が教えるより説得力を持って心に響く」と話す。

学習指導要領が肝心な点をぼかしてきた理由

小中高校生に早いと考えるなら、いつなら教えても大丈夫なのだろうか。地方では、高校を卒業してからほどなく結婚する人もめずらしくない。社会人を全員集めて性教育を行うのもほぼ不可能だろう。リプロダクティブ・ヘルス&ライツを知っていようがいまいが、望まない妊娠をする、あるいは妊娠させるリスクに、子どもたちはさらされている。

なぜ学習指導要領は、肝心な点をぼかしてきたのか。性教育の歩みを確認してみよう。樋上氏は40年ほどの教員生活の中で、性教育の変化のただなかにいた。

1980年代後半、HIVの世界的な感染拡大を背景に、性教育ブームが起こる。足立区では、性交を含めた授業を小中学校連携でどのように進めるか検討する、性教育資料作成委員会が結成された。1992年には小学校でも保健の教科書ができ、性に関する指導が盛り込まれるなどしたことから、「性教育元年」と言われた。

ところが、2000年頃からバックラッシュが始まり、性交を教えることへの批判が起こる。2001年に母子衛生研究会が作成した中学生向けの教材『思春期のためのラブ&ボディBOOK』は翌年、自民党の山谷えり子衆議院議員(現在は参議院議員)が国会で「行き過ぎたジェンダーフリー教育」と批判し、全国でテキストを回収するきっかけを作った。その翌年には東京都立七生養護学校(現東京都立七生特別支援学校)の性教育が、古賀俊昭東京都議などから批判され、教員が処分される。

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