「性教育」を毛嫌いする日本が抱えている大問題 女性の権利に対する意識低下につながっている

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「なぜ性器が大事なのか、なぜ無断で人の体を触ることがいけないのか、という科学的なことを伝えないで、『守りましょう』だけでは、子どもたちへの説得力に欠けるのではないでしょうか」と樋上氏は批判する。

このままではいけない、と危機感を持った人々が近年、家庭向けの性教育本を次々と刊行している。しかし、それだけでは一部の人しか、子どもへの伝え方を学ぶことはできない。学習指導要領で性をきちんと学校で教えることを妨げるのは、日本が1994年に批准した子どもの権利条約が定める、子どもが学ぶ権利とあらゆる暴力・虐待・搾取から守られる権利を守っていないことになるのではないか。

性についてわからなければ権利もわからない

性交をきちんと教えなければ、リプロダクティブ・ヘルス&ライツについて、理解することもできない。性教育をきちんと受けられなかった大人たちは、性が豊かな人生と人間関係を育てるものだと理解できていないのかもしれない。

「配偶者の同意が必要」といった、女性の自分の体に対する権利を侵害する言葉に敏感に反応する世論からは、リプロダクティブ・ヘルス&ライツに関する知識があり、人権意識が高い人たちが増えたことが見えてくる。

同時にその反応からは、まだ女性の体を「子どもを産む器」とみなす人がたくさんいることもうかがわせる。何しろ、性交についてすら、教育現場で教えられない期間が長いのだから。性交も学ばず、宿した命を奪うかどうかという決断をする重みを考えることは難しいだろう。

産む、産まないについては、一緒に生きている、あるいはその予定のパートナーがいる場合は、2人で話し合って決める必要がもちろんある。しかし、そういう相手の子でない場合は、本人に決める権利がある。

先進国の大半は、日本と違って性交を含めた包括的性教育を実践している。性についてきちんと知ることもできず、リプロダクティブ・ヘルス&ライツに関する知識も身に着かなければ、本当の意味で豊かな人生を送ることはできないだろう。

阿古 真理 作家・生活史研究家

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あこ まり / Mari Aco

1968年兵庫県生まれ。神戸女学院大学文学部卒業。女性の生き方や家族、食、暮らしをテーマに、ルポを執筆。著書に『『平成・令和 食ブーム総ざらい』(集英社インターナショナル)』『日本外食全史』(亜紀書房)『料理に対する「ねばならない」を捨てたら、うつの自分を受け入れられた』(幻冬舎)など。

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