「性教育」を毛嫌いする日本が抱えている大問題 女性の権利に対する意識低下につながっている

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ただし、「配偶者が知れないとき若しくはその意思を表示することができないとき、又は妊娠後に配偶者がなくなったときには本人の同意だけで足りる」ともある。批判の焦点は、レイプその他で相手と連絡を取りたくない、相手がわからない場合もあるのに、なぜ配偶者の同意が必要と言うのか、ということにある。

しかし、母体保護法はそういう場合の例外も、きちんと記している。発言とその内容に関する報道からは、その例外が見えにくい、あるいはそれ自体がきちんと周知されていないことが問題だったと言える。

法律は時代に合わせて変えていける。今は、中絶の前提として、配偶者の同意が必要と、法律の条文の最初に書く必要があるかを考える時期なのではないだろうか。

厚労省からは、「国民の価値観・家族観を注視しながら、今後も適切な運用を心がけていきます」という回答が得られた。問われているのは、私たち国民の価値観である。そこで、中絶の権利を含むリプロダクティブ・ヘルス&ライツ(性と生殖に関する健康と権利)とは何か、改めて考えてみたい。

性に関する意識や制度が遅れている日本

自分の体は自分のモノ、とするリプロダクティブ・ライツは、1970年代のフェミニズム・ムーブメントのときから強く主張されている。1994年にカイロで開かれた国際人口開発会議で提唱されるなどした、国際的に確立した女性の権利である。

日本では、生殖に関わる過程で健康な状態にあることを指す「リプロダクティブ・ヘルス」と組み合わせ、「リプロダクティブ・ヘルス&ライツ」という概念がよく使われる。2000年の男女共同参画基本計画で、このリプロダクティブ・ヘルス&ライツは、女性の人権の1つとしている。

しかし、性に関する意識や制度が遅れがちな日本で、リプロダクティブ・ヘルス&ライツは本当に確立した権利になっているのだろうか。

「中絶するかしないかは女性の権利で、この問題についてはちゃんと考えないといけないと思います」と話すのは、東京都足立区立中学校で保健体育教師として長年、性教育の授業に携わってきた樋上典子氏だ。

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