郊外のゴルフ場が“異次元”価格で取引された裏には、企業不動産をめぐって暗躍するPE(プライベートエクイティー)ファンドの存在が。
東京都昭島市。シンガポールの物流施設デベロッパーの日本法人「日本GLP」は2022年2月、複合施設「GLPアルファリンク昭島」の開発を発表した。約65万平方メートルという広大な敷地に物流施設6棟、データセンター9棟などを建設する巨大プロジェクトだ。
もともとの土地所有者は昭島市内で輸送機器の製造などを手がける昭和飛行機工業の子会社。現在「昭和の森ゴルフコース」というゴルフ場が運営されており、今後再開発によりGLPアルファリンク昭島に変わる予定だ。
昭和の森ゴルフコースは、2021年2月に日本GLPの手に渡った際に不動産業界の耳目を集めた。隣接するホテルなども含めた簿価約88億円(2019年3月末時点)に対して、推定1300億円もの値がついたためだ。
多角化経営を「尊重」するはずが
郊外のゴルフ場が“異次元”価格で取引された裏には、企業不動産をめぐって暗躍するPE(プライベートエクイティー)ファンドの存在があった。
事の発端は2019年6月にさかのぼる。当時、東証2部に上場していた昭和飛行機工業について、親会社である三井E&Sホールディングス(HD)は持ち株の売却を模索していた。声をかけた複数社のうち1社が、アメリカの投資ファンド・ベインキャピタルだった。
ベインは三井E&SHDから株式を取得するだけでなく、TOB(株式公開買い付け)を通じて昭和飛行機工業を完全子会社化する方針で資産査定を進めた。12月下旬に買い付け候補者に選定されたのち、翌2020年1月にTOBの実施を正式に発表。TOBは無事成立し、昭和飛行機工業はベインに買収された。
本業の輸送機器製造のほか、昭島市内に保有する広大な土地を生かした商業施設やホテル、ゴルフ場の賃貸・運営が昭和飛行機工業の屋台骨だ。TOB時の投資家向け資料によれば、ベインはこうした多角化経営を尊重する意向を表明していたという。
ところが、輸送機器製造と不動産賃貸という両輪の経営は早くも転機を迎える。
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