「オフィス空室率6%台」は気にする水準ではない グローバルにみると空室率は「10%」が普通

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コロナ禍に伴う在宅勤務の浸透で企業のオフィスが縮小する中、大型オフィスビルの供給が止まらない。今後のオフィス需要について、コリアーズ・インターナショナル・ジャパンの小笠原行洋会長に聞いた。

都内で建設中のオフィスビル
2023年には多くのオフィスビルが竣工する(撮影:今井康一)

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2022年から2026年までの間に、東京主要5区で200万平方メートルを超えるオフィスビルが竣工する。とくに2023年は、森ビルの「虎ノ門・麻布台プロジェクト」を筆頭に、住友不動産の「三田三・四丁目地区」や東急不動産の「渋谷駅桜丘口地区」など、延べ床面積で20万平方メートルを超える大型再開発が続く。
大量供給を控える中、都内では約2年間、空室率が上昇するとともに賃料が下がっている。これからの日本のオフィス需給はどうなるのか。総合不動産サービス大手のコリアーズ・インターナショナル・ジャパンの小笠原行洋・マネージングディレクター兼会長に聞いた。

オフィスビルの供給過剰には至っていない

――東京主要5区(千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区)では、2022年から2026年までの5年間で、約234万平方メートルのグレードAオフィスビル(基準階面積300坪以上)が新規供給されます。供給過剰の懸念はないのでしょうか。

デベロッパーは東京の陣取り合戦をするかのごとく土地を買い集めている。かつては都内といえども、基準階面積が300坪以上なければデベロッパーはオフィスビルを作らなかった。それが今やリーシングに手間のかかる100坪以下の土地でもオフィスビルを建てるようになってきている。

2023年に大規模オフィスビルが多く供給されるので、それに伴い需給のバランスが少し緩くなるのは確かだろう。

とはいえ、2010年から2021年までの大規模オフィスビルの平均供給量は44.5万平方メートルだったのに対して、供給ペースが1割ほど低い。それに2023年の新規供給は虎ノ門など、一部エリアに限定される。供給過剰という水準ではなく、供給が少し増えるぐらいのレベル感だ。

――2022年8月末時点の都心のオフィスビルの空室率は6.3%(東京主要5区・グレードAオフィス〈コリアーズ調べ〉)と徐々に上昇しています。

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