子ども服老舗を「ロックに再建」、異色5代目の凄み 朝ドラのモデルにもなった「ファミリア」の今

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壁にレトロでモダンな雰囲気のポスターが、低めの棚には陶器や人形などが――棚の中には、ビジュアルブックをはじめ、さまざまな書籍が並んでいて、誰でも手に取って見ることができる。

こういうものに囲まれることで、また資料として触れることで、創造的な仕事をしていく人=「クリエイトできる人」になってほしいという岡崎さんの意思の表れでもある。整然としているのに無機的な感じがせず、オフィスが生き生きと動いている空気が伝わってくる。

提供するコンテンツをビジュアルで図式化

特筆したいのは、オフィスの入り口にある「ビジュアルプラットフォーム」と呼ばれているものだ。真っ白な壁に、A4サイズの紙に印刷された写真が縦横にわたって数十枚、貼りだされている。

横軸は1月、2月といった時系列、縦軸は、子ども服、レストラン、教育で提供するカリキュラムなど、今のファミリアが手がけている各分野で展開されているもの。いわば、ファミリアが提供するコンテンツをビジュアルで図式化したものだ。このコンテンツの制作には、社員の大半がかかわっているという。

社内にある「ビジュアルプラットフォーム」(写真:ヒラオカスタジオ)

半年分がひと目で見渡せるので、会社の指針と実行されていくものとを、社員が見て感じ、理解できるようになっている。共有化であれば、ネットでいつでも見られるようにする手もあるのだが、岡崎さんは、あえて壁に貼り出す形式にこだわった。

「経理も営業もデザイナーも、誰もがいつでも視野に入っていることが、会社が向かっている先を体感するのに役立つと判断したのです」

これらの取り組みは「毎日の地道な積み重ね」であり、立て直しは「V字回復ではなく、10年かかっている」と岡崎さんは言う。

赤字だった業績も、この3年で、営業利益率が2桁近くに改善してきた。今は営業利益率15%を1つの目標に、それを継続させながら、質を上げていくことを目指している。

会社の向かう方向が明快で、そこに求心力がついてくれば、ブランドは強くなっていく。「まだまだこれから」と岡崎さんは言うが、ここ10年続けてきた研鑽によって、明るい未来を築く風土が着実に根付いている。

川島 蓉子 ジャーナリスト

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かわしま ようこ / Yoko Kawashima

1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了後、伊藤忠ファッションシステム入社。同社取締役、ifs未来研究所所長などを歴任し、2021年退社。著書に『TSUTAYAの謎』『社長、そのデザインでは売れません!』(日経BP社)、『ビームス戦略』(PHP研究所)、『伊勢丹な人々』(日本経済新聞社)、『すいません、ほぼ日の経営。』『アパレルに未来はある』(日経BP社)、『未来のブランドのつくり方』(ポプラ社)など。1年365日、毎朝、午前3時起床で原稿を書く暮らしを20年来続けている。

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