経営は悪化の一途で、80億円以上の借金があり、100人ほどのリストラをしなければ立ち行かない状況だった。
「店は多すぎるし組織もぐちゃぐちゃ、オフィスも雑然としていて汚い。ダブルのスーツを着たベテラン社員たちが、子ども服の話をしている。世の中の潮流や、ライフスタイルの変化を知ろうともせず、前年比の売り上げに話が終始していて、未来に向けての話がまったくなされていない。しかも、創業者である祖母がいなくなってから、男子型の会社になってしまっていた。抜本的に変えなければと思ったのです」
父が急逝し、2011年、岡崎さんは5代目の社長としてファミリアを率いることになった。本当はアメリカに帰ってデザイナーの仕事を続けたかったというが、ファミリアという会社も社員も好きだから、自分がやるしかないと、「ロックンロールで社長を引き受けることにした」。
そう聞くと「ちょっとかっこよすぎる」と感じるが、負の遺産を抱えた会社を創業家として継いだのだから重い責には違いない。
いいときは悪い方向から、悪いときはいい方向から見る
引き継いだ時点で、ファミリアはすでに創業60年を越えていた。問題は山積しているのに、抜本的な改革をはかって引っ張る人がいないので、停滞感が強くなっていたという。
「成長期、発展期を経て、停滞期に入っていたのだと思います」
顧客層の年齢が高くなっていて、売り上げはピーク時の半分にまで落ちていた。
「社員からすれば、ファミリーのボンボンで、アメリカでデザイナーをやっていた人が急に社長になった。何が何だかわけがわからず、みんな不安だったと思います(笑)」
そう聞けば、そのとおりかもしれないと想像が及ぶ。
アメリカでデザイナーとして仕事していたことは、ファミリアを立て直すにあたって大きく役立ったという。さまざまな分野のすぐれたクリエイターと仕事をする中で、自分にしかできない発想を実行していくこと、そのために、ものごとをさまざまな角度から見る癖がついていた。「いいときは悪い方向から見ること、悪いときはいい方向から見ることといった訓練が効きました」。
では、どう改革をはかっていったのか。
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