中東より北朝鮮を心配せよ、世界が最も恐れるべきリスクは朝鮮半島《田村耕太郎のマルチ・アングル・ビジョン》
中東危機は広がらない。
こちらアメリカでは1月下旬から始まったエジプトでの政変以来、連日にわたって中東情勢が報道されている。「エジプト革命は湾岸に広がる」といったセンセーショナルな見出しがつけられている。バーレーンや北アフリカで暴力の連鎖が広がっている様子は心から残念だ。
ただ、英米メディアの報道姿勢にはうさん臭さも感じる。「スエズ運河が危ない」「産油国に革命が伝播すれば原油価格や食糧価格もただでは済まない」。まるで混乱を望んでいるかのような内容で、先物取引と絡んでいるのではないかとまで勘ぐりたくなる。
だいたい、スエズ運河を通っている原油など中東産原油の数パーセントである。バーレーンやイエメンにデモが広がっているとはいえ、大産油国であるサウジアラビア、イラク、アラブ首長国連邦(UAE)、クウェート等は安定している。
情勢が流動化しているリビアだが、北アフリカへの影響はそもそも予想されていた。
同国は全世界の原油生産量の3%を占めるに過ぎず、本来であれば、原油価格に影響が
出るような状況にはない。資産市場に影響を与えたいかのような英米メディアの報道合
戦で短期的に原油市場が影響を受けているだけだ。中長期的には影響は非常は限定的だ
と確信する。
私は、今回の革命とまで騒がれるエジプトの政変劇が、中東諸国まで広く伝染する可能性は相当低いと思う。中東が不安定化したり、イスラエルとの問題が深刻化する可能性も低いと思う。その結果、原油価格もこの問題で影響は受けない。われわれ日本人が心配すべきは極東の情勢である。それは一部のメディアが騒いでいるエジプト革命の中国への伝播ではない。北朝鮮情勢である。
民主化ではなく経済問題
チュニジアから始まったエジプト革命を、メディアも識者も「民主化運動」と断定するが、あれはどう見ても「経済問題」だ。
長期政権による腐敗と経済の非効率化に、金融・経済のグローバル化が重なり、格差の拡大、失業の増大、食糧価格の高騰が同時に起こってしまった。その怒りを効果的デモに変えたのがソーシャルメディアや携帯電話である。