中東より北朝鮮を心配せよ、世界が最も恐れるべきリスクは朝鮮半島《田村耕太郎のマルチ・アングル・ビジョン》
ソーシャルメディアが起こした革命ではなく、経済問題が引き起こした不満の爆発なのだ。ソーシャルメディアの役割は人々の動きを連携させたにすぎない。
エジプトの政変が、ムバラク氏がもっと政権にしがみついて、軍部もそれに従い、長期化しさらなる流血を伴うような暴力騒ぎになれば、民衆のエネルギーは高まり、中東への影響もさらに増した可能性はあったかもしれない。
エジプトの政変が長期化せずに終わったことで、熱狂の余韻も冷めやすく、爆発的な伝染力が落ちた。そして、いまだに熱狂に酔う部分のあるエジプトの政権移行が、今後軍部と野党で現状を大きく変えるものではなく、失望を生むだけであった場合、中東の民衆も冷静になるのではないか。
大産油国がエジプトのようにならない理由は簡単だ。
サウジやUAEやクウェートやイラクやイランの指導者はエジプトと同じ轍を踏まない。民衆の不満が自らに向かってこないようにすればいい。民衆が求める経済改革や政治改革を自ら行い、デモの出鼻をくじけばよいのだ。
すでに産油国の中には、莫大なオイルマネーを活用し、現金給付を含め、格差の解消や若者の失業対策に大胆に乗り出したところもある。また、もともとエジプトほど人口が多くないので、ヨルダンのように内閣総辞職に自ら踏み切る国もある。
それでも不十分な場合、大衆の不満が自らに向かわないよう外にはけ口を持っていく国も出てくるだろう。たとえば、外国人労働者を大量に解雇し、国内の若者に雇用を生み出すように。
中国は揺るがず
大産油国の中で人口約2500万人と巨大なサウジは、莫大な人員と資金をかけてインターネットやソーシャルメディアの検閲を進めている。エジプトのように組織化された野党的市民集団やそれとつながる野党は存在しない。また警察や軍や治安部隊に、野党やそれにつながる市民に対する同情心もない。