池上彰「報道の自由が大切な理由を知ってますか」 中国の情報統制で、世界中で多くの人が犠牲に
もう1つ考えたいのが、「世論調査」についてです。毎週のようにどこかのメディアが世論調査の結果を出しています。
たとえば最近(2021年7月の本講義時点)でいうと、朝日新聞は、菅内閣支持率が発足以降最低の31%だったと報じています。毎日新聞が報じた内閣支持率は30%、フジテレビ系列のFNN(フジニュースネットワーク)と産経新聞社の合同調査では39 %と出ています。メディアによってずいぶん違うでしょう。
世論調査はどのように行われているのか
世論調査というのはどのように行われているのか、これをちょっとお話ししたいと思うんですね。
私が学生時代、実は新聞社の世論調査の調査員のアルバイトをしたことがあるんです。選挙が始まると「あなたはどの政党を支持していますか」という世論調査が行われます。私が大学生の時代だからもう50年前、そのころはみんな電話帳に自分の家の電話番号を記載していたのね。だけどそのときは電話での世論調査ではなく、まずは住民基本台帳で無作為抽出をしていました。何百人に1人をランダムに選ぶ、これが統計学的に意味のあることなんですね。
新聞社へ行くと、抽出された対象者の住所と名前が書かれたものを渡されます。それをもとに対象者の自宅に行って、「あなたはいまの内閣を支持しますか」とか「どの政党を支持しますか」とか聞いてくる。そして新聞社に戻って、世論調査の担当者に提出するんです。
そうすると担当の新聞記者がね、「君、ここへどうやって行ったの?」って聞くわけです。「バスに乗って行きました」。「ふーん、バスで行ったんだ。どこの停留所で降りたの?」って、さらに聞かれる。
つまり大学生のアルバイトの中にはいい加減な調査をするヤツもいるわけ。1軒1軒訪ねていくのって面倒でしょう。いまなら車を持っている大学生もいるけど、私が大学生の時代、車を持っている学生なんていないから、路線バスに乗っていくわけだよね。「どうやって行ったの?」なんてしれっと聞きながら、本当にこの学生は調査をしてきたのか、きちんと行かずに勝手に自分で書き込んだのかってことをチェックするわけです。こうやって正確性を担保するんだなと思いました。
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