池上彰「報道の自由が大切な理由を知ってますか」 中国の情報統制で、世界中で多くの人が犠牲に
しかしいまはWi‐Fiですぐにデータが届くようになったので、現在はリアルタイムで数字が送られる状態になっています。たとえばワイドショーでコロナの話をするでしょう。やはり視聴率がとれるんですね。たまには違う話をしようとまったく別のテーマにしてみたら視聴率がガクンと落ちた。毎日毎日、数字が出るものだから、結果的に内容がそれに大きく左右されることになります。
世帯視聴率から個人視聴率へ
そして当たり前ですが、あくまで統計学的に処理をするということは誤差があるわけですね。
たとえば視聴率10%と出た場合、本当に10%かというと、実はそれは上下4.2%の範囲内が本当の数字になる可能性が95%ということです。つまり視聴率が9%と11%って、誤差の範囲内にある。有意差は実はないんだということですね。だけど人間って、やっぱり9%より11%のほうが、やった! 2桁だってことになるでしょう。統計学的には意味のないわずかな誤差で、一喜一憂しているんだってことです。スポンサーにしてみたって、同じことですよね。
さらに、それまで視聴率ってあくまで「世帯視聴率」、それぞれの家で何を見ているかでした。だけど高齢者ってあまりお金を使わないんだよね。活発に消費をしてくれるのは20代、30代の女性です。だから20代、30代の女性が見ている番組に広告を入れたいということになり、いまは「個人視聴率」をみるのが主流になっています。
調査の機械も変わりました。お父さんボタン、お母さんボタン、娘さんボタンみたいなのがあって、そのボタンを押すことによっていま誰がテレビを見ているかわかる。
たとえばここに2021年4月19日から4月22日までのテレビ朝日の『報道ステーション』の視聴率のデータがあります。それを見ると、世帯視聴率では13.5%、だけど個人視聴率で見ると7.6%です。テレビ朝日はそれまで世帯視聴率ばかり見ていました。世帯視聴率で日本テレビを抜いたと喜んでいましたが、個人視聴率では高齢者が多く見ていることがわかって、方針を変えようとしています。
いま各テレビ局は世帯視聴率は問題にしていないんです。個人視聴率、あるいはコア視聴率といって、世帯より個人が重視されるようになっています。
たとえば、わかりやすく説明すると、テレビを持っている世帯が5軒あったとするでしょう。5軒のうちの2軒がその番組を見ていたら5分の2、だから視聴率は40%ということだよね。ものすごく高い数字が出るよね。でもこれがたとえば5軒それぞれ4人家族だとして全部で20人、2軒のそれぞれ1人だけが見ていましたという個人視聴率でいうと、20分の2だから視聴率は10%ってことになる。世帯視聴率では40%だけど、個人視聴率だと10%、と考えると受け止めるイメージってずいぶん違うよね。
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