テレビ報道の凋落を指摘する「報道バズ」の凄み ステマや性差別、今テレビ局が抱える諸問題
今年7月の都知事選のときも、9月の自民党総裁選のときも、テレビは「公平」「中立」を欠いていた。この7年8カ月で完全に支配され、政権御用達放送となった番組の死屍累々。志あるジャーナリストやテレビマンは離れ、視聴者もスポンサーも離れ、ネットに流れた。気骨ある番組も存在するが、ほかは新興宗教信者のような状態。総務省にいびられすぎておかしくなったか。が、今に始まったことではない。
テレビだけじゃない、新聞も同じ。記者クラブ制度は「俺たちの仲良しサークル」と化し、記者会見は聞くほうも話すほうも台本どおりの茶番劇でカンペの棒読み。国民に真実ではなく絶望を進呈。ま、これも今に始まったことではない。
そして芸能事務所の闇。大手事務所のゴリ押し・バーター・ステマに加え、スキャンダルの隠蔽も。個人事務所や小さな会社の芸能人は、いとも簡単に芸能界を追放されるが、大手事務所所属タレントはスキャンダルを起こしても、大金と密約で守られる。テレビでは一切触れない気色悪さ。これも今に始まったことではない。
日本のメディアを挑発する「報道バズ」
この異常な日本のメディアに対して、ひじ鉄をくらわす挑発的なドラマがある。Amazon Primeなどで観ることができる「報道バズ」という作品だ。舞台はニューヨークにあるニュース配信アプリ「報道バズ」編集部。
主人公は、地上波キー局(劇中では関東テレビという名称)のアナウンサーだった和田明日佳(本田真穂)。バラエティー番組ばかり担当させられていたが、やりたいのは報道。意を決して退社し、単身渡米。「噓のない報道」を目指すも、さまざまな障壁が……という物語だ。
全6話、しかも1話が15~19分と短い。短いが、盛り込まれた日本のメディアに対する皮肉と提言はてんこ盛り、かつ的を射ている。「地上波キー局でやれるもんならやってみろ」という内容でもあり、革新的な確信犯でもある。テレビ局や新聞社の実名も登場するし、実際に起きた事件にシンクロさせたエピソードも多い。フィクションだが「さもありなん」と「ノンフィクション」を織り交ぜているのだ。
冒頭に書いた「今に始まったことではない」事象を次々と俎上に乗せ、日本のメディアのあり方を問いながらも、ひとりの女性の物語として、ぐっとひきつける。今、私がドラマに欲している要素がぎゅっと詰まった、満足感の高い作品だった。
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