テレビ報道の凋落を指摘する「報道バズ」の凄み

ステマや性差別、今テレビ局が抱える諸問題

もちろん、低予算で作りあげた「未熟感」は否めない。役者陣も、棒読み棒立ちの朴訥さが目立つ。ところがだな、それを凌駕する内容の濃さに、私の中ではいいね!ボタンがどんどん押されていく。「欽ちゃんの仮装大賞」の審査員票の電光表示みたいな感覚を想像してほしい。

それぞれのキャラクターが抱える葛藤や違和感が徐々に見えてくると、朴訥さが逆にジャブのように効いてくる。不思議な味わいがあって、ひとつひとつのセリフをかみしめたくなるし、きちんとサスペンスでしれっと社会批評だ。定番と予定調和と大手接待の日本のドラマに辟易している人は、ぜひ一度観てほしい。

明日佳はいわゆる「女子アナ」で、関東テレビでは男性の欲情装置に甘んじていた。バラエティー番組ではチョコバナナの練乳がけを上目遣いで食べさせられ、その画像が報道バズのSNSでも、ことあるごとに拡散される。いわゆる「クソリプ」である。男性関係のスキャンダルを起こしたと週刊誌に報じられたこともあり、着任早々「勘違いアナは消えろ!」とも書き込まれる。ただし、彼女はへこたれない。世間から誤解と曲解をされているが、芯の強い努力家であり、ニュースを迅速に正確に伝える能力が高いこともわかる。

大手事務所に利用される報道番組を糾弾

古巣である関東テレビのプロデューサーがニューヨークにロケに来て、ステマ報道をすることを知り、明日佳が理路整然と糾弾するシーンは胸がすく。

その中身は「日本のアイドルがニューヨーク公演、クールジャパンと現地でも大盛況」。実際に並んでいた客は道端でチケットが無料配布されたから来ただけ。撮影クルーのアゴ・アシ・メシ・マクラ(要するに現地ガイドや移動手段、食事から宿泊までの費用)は全額事務所もち。報道番組内でも取材枠を設け、大盛況をでっちあげるというのだ。どっかで聞いたことあるな。日本の女優がブロードウェーミュージカルで拍手喝采とかね。テレビがこぞって取り上げていた記憶がある。さもありなん。

明日佳はその現場をリポートする。「一見、無害に見えるステマ報道ですが、これは関東テレビの報道内容が利害関係によって操作されているということを意味します。同じことが政治・経済・安全保障といった重要なトピックスで行われていないと、視聴者はどうやって信用すればよいのでしょうか? 以上、芸能事務所とメディアの癒着、放送倫理違反の現場からお届けしました」と皮肉たっぷりに締める。思わず拍手しちゃったシーンでもある。

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