テレビ報道の凋落を指摘する「報道バズ」の凄み ステマや性差別、今テレビ局が抱える諸問題
「報道バズ」を制作したのは、ニューヨークを拠点に活動する日本人クリエイターたちだ。「日本の地上波ドラマが作らないものを作る」を目指したという。作れないではなく作らない。いくらでも作ることができるはずなのに作らない、作ろうとしないテレビ局に対しての皮肉。そこに制作陣の心意気を感じる。
では日本のテレビ局は本当に作らないのか? 以前、原稿に書いた東海テレビの「さよならテレビ」は、ドラマではなくドキュメンタリーの体だったが、東海テレビの報道局内にはびこる忖度と迎合と焦燥感をあぶり出していた。報道に携わる人の信念の揺らぎも描きつつ、全体的には「諦観」が漂っていた。
また、2019年に地上波で放送したドラマ「新しい王様」(TBS×Paravi)は、実業家や投資家によるテレビ局買劇を展開しつつも、テレビ局に対する皮肉と裏事情をえげつなく描いた。フェイクニュースを鵜呑みにする報道の現場、ドラマのキャスティングは大手事務所に握られ、枕営業や愛人契約が幅を利かせるなど、主役の藤原竜也がバッサバサと斬り込んでいく。敵対する投資家役の香川照之ら豪華な俳優陣でこれだけ攻めた内容なのに世間の反応は鈍かった。日曜劇場でやれよ、と。
テレビの自浄作用推進3部作
私の中では「テレビの自浄作用推進3部作」としてこの3作を推したい。キー局ではなく地方局、テレビ局ではなく動画配信プラットフォームへと優良なコンテンツが集まっていく今の時代、地上波キー局は生き残りをかけてどうするべきか。地上波キー局の上層部が「そういうのはうちではやらない」と無視するネタにこそ、テレビの未来が拓けていると示唆しているからだ。「新しい王様」で藤原竜也が放っていたセリフを最後に引用しておく。
「ドラマだって大手事務所から持ち回りで主演俳優を出して、小さな役も同じ事務所の新人で埋める。そういうの視聴者に見透かされてるんだよ。バカにされてるのわかんないの?」
「今は視聴者が情報を選択する時代だ。危機感なく楽観して垂れ流す一方的な情報やゆるいコンテンツなんて、いつか誰も観なくなる日が来るよ」
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら