テレビ報道の凋落を指摘する「報道バズ」の凄み ステマや性差別、今テレビ局が抱える諸問題
この勢いだと、全話のあらすじを書きたい衝動に駆られる。もう1点だけに絞り込もう。うなずきすぎて、首の筋を痛めそうになったエピソード、第4話だ。
明日佳が提案したネタは「テレビでの女性の扱い」だ。日本に限らず、世界中のテレビで「女性の価値は見た目である」というメッセージを送っているという。そして視聴者はテレビを通じて「女性は視聴者の目を癒やす役割だ」というメッセージを受け取っている、と指摘する。
髪形をなんとかしろだの、笑顔を増やせだの、服装はこうしろ、だのとテレビ局に毎日送られてくるクレームと誹謗中傷。そのほとんどは女性アナウンサーに対してであり、男性アナウンサーには皆無。そして、女性アナウンサーを批判するのは女性であるという事実。オーストラリアの男性アナウンサーが実際に行った実験(実話)の話も交え、いかにテレビが潜在的な性差別をしているかと問題提起したのだ。
女性アナウンサーという職業の悲劇を、皮肉った過激な映像と言葉で突きつける明日佳。この視点が日本のテレビ界には皆無。日本の女性アナウンサーには、インテリで毒舌で本当は超絶面白い女がたくさんいるのに、「女子アナ」という仮面をかぶる訓練をさせられている。清楚、笑顔、従順という仮面。いちいちこうるせー視聴者に対しても釘を刺す印象的な場面でもある。
男のコンプレックス、悪意なき差別も描く
おっと、ほかの登場人物も紹介しなければ。報道バズの編集長・柴田哲也(松崎悠希)は、亡き母が著名な報道ジャーナリストという設定。母の名を冠したジャーナリズムの賞まである。つまり「偉大なる母の息子」というプレッシャーと苦悩があるのだ。
柴田が心の内を明かせるのは、夜な夜な金で買う娼婦のアニカだけ。ものすごく卑屈で歪んでいて、ものすごく孤独だ。報道魂を貫こうとする明日佳に影響を受け、彼もまた成長する。明日佳の物語である一方、柴田の物語でもある。
英語が苦手な森敦(辛源)と、飲み物を飲むとゲップが出ちゃう近藤史央莉(コリンズ・ユリエ)はハーフの日本人。このふたりが日常で頻繁に遭遇する「ハーフあるある」を展開。「日本語上手ですね」「日本人ですから」のやりとりにうんざりしている様子も描く。田村信吾(倉持哲郎)はゲイであることをオープンにしている。彼は報道人に必要な視点と批評性をもっているものの、屈折したコンプレックスを抱えている。
そして、報道バズの看板ジャーナリストとして船出するはずだったのが、気骨あふれるベテランの徳川エリ(赤西里佳)。日本のメディアを批判するVTRを作ったことで、日本の新聞連載の仕事を下ろされてしまう。ここにも言論と報道の自由を奪われるという「さもありなん」が描かれているのだ。
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