池上彰「報道の自由が大切な理由を知ってますか」 中国の情報統制で、世界中で多くの人が犠牲に
愛知県で言うと、メ~テレの朝の『羽鳥慎一モーニングショー』という番組があるでしょう。あれ世帯視聴率でいうとダントツなんだよね。本当に数字がとれる。でもコア視聴率というかたちで、若い人がどれだけ見ているかというと、あまり見られていない。だから視聴率は高いけど、若い人は見ていない番組ってことになると、価値が違ってくる。
いまやテレビの世界もこのような過渡期、テレビ局が非常に悩んでいるということです。本当にいろんな意味で、オールドメディアが岐路に立っているということだろうと思います。
香港では「リンゴ日報」が発行停止に
さて、これまでいろいろなことをお話ししてきました。やはり皆さんに最後に伝えたいのは、いかに言論の自由、報道の自由が大事かということです。
香港で「アップルデイリー」という日刊紙がついに発行停止に追い込まれることになりました。日本語風に言うと「リンゴ日報」ですね。
香港というのは実に多種多様な新聞があったんです。中国共産党ベッタリの新聞もあれば、「リンゴ日報」のように、共産党に極めて批判的なメディアもあった。あるいは中立的な立場で伝えている新聞もありました。
だから一昔前に香港へ行くと、本当に「言論の自由があるんだな」と思いました。ところが、香港が中国に返還されてからじわじわと自由が失われ、ふと気がつくと、中国共産党のことを批判できるのは「リンゴ日報」だけになっていた。その「リンゴ日報」がついに発行停止です。
「リンゴ日報」ってカラフルな新聞で、一面の上の題字のところに赤いリンゴの絵が描かれているんですね。なぜか。みなさんコンピューターの会社であるアップルのマーク、知っているよね。あれは『旧約聖書』からきているんです。神様がアダムとイブに対して、エデンの園の中央にある知恵の木の実を食べてはいけないと命じていたのに、アダムとイブは蛇に誘惑されてその実を食べてしまった。それによって人間に「知恵」がついた。
聖書にはただの「知恵の木の実」と書かれているだけで、何の実かは書かれていないんだけど、なぜかこれがリンゴってことになった。リンゴの実をかじって人間に知恵がついた。アップルのあのリンゴをかじったデザインは、知恵がついた人間たちのシンボルというわけです。「リンゴ日報」も「私たちは自分で判断するんだ」という意味で、リンゴのマークをつけました。そして中国共産党のやり方を批判していた。そうするとそれが、「国家安全維持法」という法律に違反するといって創始者が逮捕されたということです。
ちなみに世界の報道の自由度ランキング2021年版で中国は180位中177位です。GDPは世界第2位なんですけどね。
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