池上彰が解説、ジャーナリストが「戦場に行く」訳 日本と海外では彼らへの「向き合い方」が違う

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夜になると仮設の宿舎で寝泊まりしますが、チグリス川の向こう側からロケット弾が飛んでくる。近くに着弾したときに爆風が入ってこないように窓の外に土嚢を積んであります。ただし「直撃を受けたら諦めてください」と言われました。

ロケット弾が発射されると、グリーン・ゾーンの上空に浮かんでいる観測気球が、その炎を感知して空襲警報が鳴ります。「空襲警報が鳴ったら、防弾チョッキを着てヘルメットをかぶってください」と言われました。

フリーランスのカメラマンと一緒に行ったのですが、どうやら夜中にロケット弾が発射されて、近くに着弾したらしく、朝起きて会うと、「空襲警報が鳴ってロケット弾が落ちましたね」と言われました。初めて知りました。私は熟睡していてまったく気づかなかったんです。

このロケット弾というのは、アメリカ大使館を狙って発射されるのですが、性能がいいわけじゃないので、どこに落ちてくるかわからない。アメリカ大使館の手前に日本大使館があるんです。ロケット弾を発射すると、アメリカ大使館に届く前に日本大使館に落ちるかもしれないというわけですね。だから空襲警報が鳴るたびに、日本大使館の大使館員たちは地下の防空壕に避難するということを毎日やっていました。日本大使館を訪問して、そういうことも知ることができました。

日本大使館を警備していた「グルカ兵」

まさに現場へ行くことによって、わかることがたくさんあるということです。さらに言うと、日本大使館を警備していたのはグルカ兵だったんですね。

グルカ兵って聞いたことがありますか? ネパールの精鋭の軍隊です。ネパールという国は、兵隊を輸出しているんだよね。

フィリピンというと、女性の家事労働者を送り出していることで有名でしょう。たとえば香港のお金持ちの家で働いているのはフィリピンからの出稼ぎの女性たち。香港のほかにもサウジアラビアとか、UAEとか、カタールでも家事労働をしています。彼女たちが働いて本国へ送金する。貧しいフィリピンは、そういう海外からの送金によって支えられています。

同じように、ネパールは、若い男たちを兵隊として世界各地に派遣しているんです。とくに海外に展開するイギリス軍の戦闘部隊には実はグルカ兵がいるんです。

それでいうと、フランス軍は、たとえばアフリカのマリなどにイスラム過激派を抑え込むために派遣されていますが、外国人部隊がいるんです。給料を払って真っ先に外国人部隊を危険なところへ送る、そういう構造になっているわけ。

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