ケインズ「一般理論」が今でも実用性の高い理由 池上彰×山形浩生「教養としての経済学」対談

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池上彰氏も大学時代に挑戦したというケインズ『一般理論』。本書はなぜ現代も影響力を持ち、読み継がれているのでしょうか?(撮影:尾形文繁)
「社会科学史上で最も影響力のある世界的名著」と名高いケインズの『雇用、利子、お金の一般理論』。その入門書である『超訳 ケインズ「一般理論」』を読んだジャーナリストの池上彰氏は、「『雑な理論で、ざっくり理解できればいい』という山形さんの解説は目から鱗でした。精緻に詰めていかなくても、実際の政治の場でうまく生かせればいい。そういう意味で、『一般理論』は、実用性、実利性の高い理論だったんだと改めて思いました」と話します。
今回は、「一般理論」が時代を超えて現代でも実用的である理由について、池上彰氏と『超訳 ケインズ「一般理論」』を編集・翻訳・解説した山形浩生氏との対談をお届けします。

難しすぎるケインズとマルクス

池上彰(以下、池上):山形さんの『超訳 ケインズ「一般理論」』は、ケインズの名前は聞いたことがあっても、読んだことがないという人に本当に幅広く届けられる野心的な試みですね。

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超訳資本論や、超訳マルクスはよく出版されていますが、ケインズの超訳は初めてです。ケインズについての解説書は、学者が非常に真面目に執筆したものばかりですしね。

私は経済学部出身で、マルクス経済学を学びました。マルクスは、基本的に資本主義を批判して、革命を起こさなければならないと言いましたが、ソ連や中国では革命が起きても、アメリカでは起きなかった。その大きな理由は、ケインズが、資本主義をうまく動かせば十分に存続可能だと考えたことです。

ですから学生時代、マルクスとケインズぐらいは1年生のうちに読んでおかねばならないと思ったわけですが、もう難しくて全然進まない。

それで、ケインズについての解説書を手に取って、なんとなくわかった気にはなるものの、いざ『一般理論』を読んでみると、文章が非常にくどくどと書かれていてわかりにくいんです。結局、ケインズは「資本主義を救った経済学者」という位置づけで見た程度で、十分に勉強しきれずに卒業してしまいました。

しかし、なぜそんなふうにくどくど書かれていたのかが、山形さんの超訳と、皮肉たっぷりの解説を読んでよくわかったわけです(笑)。

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