ケインズ「一般理論」が今でも実用性の高い理由 池上彰×山形浩生「教養としての経済学」対談
難しすぎるケインズとマルクス
池上彰(以下、池上):山形さんの『超訳 ケインズ「一般理論」』は、ケインズの名前は聞いたことがあっても、読んだことがないという人に本当に幅広く届けられる野心的な試みですね。
超訳資本論や、超訳マルクスはよく出版されていますが、ケインズの超訳は初めてです。ケインズについての解説書は、学者が非常に真面目に執筆したものばかりですしね。
私は経済学部出身で、マルクス経済学を学びました。マルクスは、基本的に資本主義を批判して、革命を起こさなければならないと言いましたが、ソ連や中国では革命が起きても、アメリカでは起きなかった。その大きな理由は、ケインズが、資本主義をうまく動かせば十分に存続可能だと考えたことです。
ですから学生時代、マルクスとケインズぐらいは1年生のうちに読んでおかねばならないと思ったわけですが、もう難しくて全然進まない。
それで、ケインズについての解説書を手に取って、なんとなくわかった気にはなるものの、いざ『一般理論』を読んでみると、文章が非常にくどくどと書かれていてわかりにくいんです。結局、ケインズは「資本主義を救った経済学者」という位置づけで見た程度で、十分に勉強しきれずに卒業してしまいました。
しかし、なぜそんなふうにくどくど書かれていたのかが、山形さんの超訳と、皮肉たっぷりの解説を読んでよくわかったわけです(笑)。