「ケインズの評価」が時代により180度変わる訳 「悪の首領」か「正義のヒーロー」か、それとも?
経済学史上で最も重要で影響力の大きい本と言われる『一般理論』(ジョン・メイナード・ケインズ著『雇用、利子、お金の一般理論』)。教養として一度はチャンレジしたものの読み通すのに挫折した人は少なくないだろう。
難しいと言われているにもかかわらず、ケインズの著書はなぜ今もなお読み継がれ、賞賛と批判の両方を浴びているのか。名著『一般理論』のエッセンスを凝縮し、現代的な意義をわかりやすく解説した山形浩生氏に、ケインズの評価が分かれる理由と新刊『超訳 ケインズ「一般理論」』で目指したことを聞いた。
リーマンショックからケインズ再評価へ
リーマンショック/世界金融危機以来、「ケインズの復活」という声はたくさん聞かれる。世界経済が崩壊しかけたとき、それに対する唯一の有効な処方箋を提供できたのが、一時は死んだとすら言われていた「ケインズ経済学」だったからだ。
ケインズの業績や主張を改めて見直そうという本はいろいろ出てきたし、金融危機から10年以上たった現在ですら、その評価が下がる様子はない。
本書も、そうした関心の高まりの中で登場した本ではある。
ぼく自身がケインズに本格的に——というのは『一般理論』を頼まれもしないのに全訳するくらいに、という意味だ——興味を持つようになったのも、そういう本をたくさん読んだからだ(そして訳したものもある)。
でも……どれを読んでも、いま一つピンとこない部分があった。というのも、金融危機をネタにケインズ復活を告げる本というのは、どれもだいたい同じストーリーになっているからだ。
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