F・D・ローズヴェルトという極めて異質な大統領

「ニューディール・リベラリズム」とその終焉

F・D・ローズヴェルト大統領の「異質性」から、アメリカ大統領とはいかなる存在かを読み解いていく。F・D・ローズヴェルト大統領(右)とエレノア・ローズヴェルト夫人、1941年 (写真:ロイター/アフロ)
世界が注目するアメリカ大統領選が間近に迫っている。「4年に1度の内戦」とも称されるこの一大イベントは、アメリカの政治・思想・社会を映す鏡だと言われる。
アメリカにおける大統領選はいかなる意味を持つのか。大統領とはいかなる存在なのか。アメリカ政治思想史を専門とする気鋭の学者、帝京大学・石川敬史氏に話を聞いた。
第3回は、大恐慌以降の「民主党優位の時代」から直近のオバマ大統領までの歴史をたどる。

特異な時代の大統領「F・D・ローズヴェルト」

佐々木一寿(以下、佐々木):1929年、株価暴落から未曾有の経済恐慌が始まります。

石川敬史(以下、石川):時の大統領は、第31代大統領フーヴァーでした。彼は共和党ですから、基本的にはレッセ・フェール(自由放任主義)の方針を持っていましたが、この経済信条を持つ人々が信じている景気の循環が起こりません。経済の落ち込みが終わる様子がまったく見えず、自立自尊をモットーとするアメリカ国民がとうとう悲鳴を上げ始めます。

こうした中で登場した第32代大統領フランクリン・デラノ・ローズヴェルト(民主党)は、4選という長きにわたって大統領を務めます。第2次大戦中の大統領だったということはありますが、いろいろな意味で、アメリカ史の中では異質な時代だったと私は思います。

まずこの時期、アメリカの人たちは彼ららしくもなく政府に従順になったのです。それから、公共事業にもあまり文句を言わなくなる。不況で仕事がなく、お金もない。文句を言っている場合ではなくなり、貧すれば鈍する、といったような状況でしょうか。

ちなみに少し予備的な話になりますが、ローズヴェルトは下半身が不自由で車いすを常用していました。アメリカの大統領には、建国以来の共通点があり、体が大きいんですね。第2代大統領と第4代大統領は小柄な人でしたが、それはまだジェントルマンの時代であり、ジャクソン以降の大統領は、だいたい大柄です。リンカンも2メートルくらい身長がありました。インテレクチュアルなイメージのオバマも185センチほどあったはずです。トランプもその体格は力士にも劣っていませんね。エネルギッシュで強いイメージが求められていることの証左でしょう。アメリカの指導者はマッチョな男が伝統的に求められてきました。

しかし、ローズヴェルトは車いすの大統領だった。これはいかにアメリカ社会の苦境がそれまでとは異質な「社会科学的な解決」を求めていたかということの表れだと思います。後に「ニューディール・リベラリズム」と呼ばれる時代の到来です。

政党の歴史として重要なのは、この時代に民主党が新たな相貌で勢力を盛り返してきたことです。南北戦争以降は、基本的には共和党支配の時代でした。ところが、この32代大統領以降、第36代大統領リンドン・ジョンソンまでは(第34代大統領のアイゼンハワーを除いて)ずっと民主党が支配しているんです。

何が起こったのかというと、かつて奴隷農園プランターの政党だった民主党が、「都市の労働者、貧民」という次のお客さん(支持者)を見つけたということです。その前の好況の時代から、「新移民」と呼ばれる大量の移民が入ってきていました。ギリシアやポーランドといった、宗教や社会構造、慣習の異なる、そして英語が通じない人たちがアメリカに大量にやってきます。

初期のアメリカに入ってきた人たちは、独立自営農民になるために西部開拓に向かいましたが、これら新移民たちは都市に住んで労働者になりたがりました。そして都市労働者は不況の中で貧窮にあえいでいます。民主党は彼ら都市労働者たちの受け皿になりました。

一方で、共和党はレッセ・フェールですから、もともと北部の自由労働者を擁護する政党だったはずなのですが、この時代の共和党は結局お金持ちのための政党になっています。お金持ちよりも貧民のほうが数は多いわけで、普通選挙ですから、ここからいわゆる「ニューディール・リベラリズム」と呼ばれる民主党支配の時代が続くことになります。

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