池上彰が解説、ジャーナリストが「戦場に行く」訳 日本と海外では彼らへの「向き合い方」が違う
グルカ兵というのは勇猛果敢に戦うというので、実はイラクの日本大使館はグルカ兵に警備をしてもらっていたということです。2011年のことです。そのときは、「日本に帰っても言わないでください」と口止めされたんですが、もう10年経って事情がすっかり変わりましたから、時効でしょう。
後藤健二さんから教わったこと
独裁者ムアンマル・アル=カダフィが殺された直後のリビアにも入りました。2011年です。このときは、後藤健二さんといっしょでした。彼は、シリアでイスラム過激派組織・自称「イスラム国」(IS)の人質になり、2015年に殺害されてしまったフリーランスのジャーナリストです。
実は私は中東に取材に行くとき、後藤健二さんとご一緒させてもらったことが何回かありました。
1967~2015年。宮城県仙台市出身のフリーランスのジャーナリスト。紛争地帯の取材を続ける中、シリアで拘束され、イスラム過激派組織・自称「イスラム国」(IS)に殺害された。
リビアでは、後藤さんと一緒のホテルに泊まったんですね。外国人専用のホテルでした。その後、日本へ帰ってきて2週間後にリビアの外国人専用ホテルが過激派に襲撃され、宿泊していた外国人たちが殺されたとニュースになりました。まさに、私が後藤さんと泊まったホテルでした。
リビアで後藤さんから教わったことに「15分ルール」があります。リビアにはテレビ東京の番組取材で行ったんですが、テレ東のクルーといっしょに車で移動しながら、戦闘が激しかったところで私が降りてリポートをするわけです。そのときに後藤さんから「15分以上いたら危険です。15分以内に必ずそこから立ち去ってください」と言われました。
これ、どういうことか。リビアの中のあちこちにイスラム過激派と連絡を取り合うような仲間がいるわけですね。外国人がリポートを始めれば、「あそこに外国人がいるぞ」というので、すぐにイスラム過激派に連絡をする。すると「捕まえてやろう」と、過激派が銃を持って車で駆けつけてくる。それには15分はかかる。だから手早くやって15分以内に逃げてくださいというわけです。そうすれば身の危険をある程度防ぐことができるんだということを教えてくれました。
その後藤さんが、殺されてしまった。本当に衝撃でした。これをきっかけに、そもそも戦争を取材するってどういうことなんだろうか。あるいは戦場を取材することに、どういう意味があるんだろうかと考えました。
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