池上彰が解説「なぜ中国はウイグル弾圧?」の核心 そもそも同じ国でも文化や言葉が全然違う
ウイグル民族のほとんどはイスラム教徒
バイデン新政権に移行しても「米中新冷戦」は続いています。いや、激化していると言っていいでしょう。バイデン政権は人権問題などで中国に厳しく対応する方針を示しているからです。
中国は建前としては多民族国家であり、漢民族を含め56の民族からなります。9割以上が漢民族なのですが、漢民族以外で人口の多い民族には自治を認めることになっていて、ウイグル民族の自治も認めています。
そのほか、チベット自治区、内モンゴル自治区など5つの自治区があります。自治区のトップはその民族なのですが、トップを支えているのは漢民族です。実際、トップは“お飾り”で実質的な力はありません。つまり、自治区も漢民族の中国共産党が支配しているのです。
いま、国際社会で最も問題視されているのが新疆ウイグル自治区でのウイグル民族への弾圧でしょう。「新疆」とは「新しい土地」という意味。18世紀に清朝の支配下に入ったので、「新しい土地」と名付けられました。ウイグル民族はトルコ系の少数民族です。もともと「チュルク」と呼ばれる中央アジアの遊牧民族が祖先です。チュルクは突厥(とっけつ)とも呼ばれ、中央ユーラシアをほぼ支配下に置いていました。
突厥が商業活動をするために西、つまりトルコのほうへ移動していきます。その結果、現在のトルコに住むようになったのです。もともと1つの民族だったのですが、現在ウイグル民族はカザフスタンやキルギスにも住んでいます。中国で大多数を占める漢民族とは見た目も文化も言葉もまったく違います。そのほとんどがイスラム教徒です。
かつて新疆ウイグル自治区では、「武力を使ってでも独立したい」というイスラム過激派がテロを引き起こしたことがあります。中国共産党による一党独裁体制の中国にしてみれば、イスラム教徒は神(アッラー)の言うことを聞きます。中国共産党より大事な存在があるのです。それは中国共産党にとって、共産党への忠誠心がないということになります。よって迫害の対象となるのです。
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