池上彰が解説、ジャーナリストが「戦場に行く」訳 日本と海外では彼らへの「向き合い方」が違う
日本の外務省が海外渡航での「危険情報」というのを出すんだよね。その国の治安情勢をはじめとした危険度を4段階に色分けして表示しています。一番危険な「退避勧告」の赤から、4番目の「十分注意」の黄色まで。赤いところに日本のテレビ局や新聞社が行くと、外務省が危険だと言っているのになぜそんなところへ行くんだって、国内で激しくバッシングされる。
結果的に日本の新聞社やテレビ局の正社員は戦場へは行けない。だけど、戦場がどうなっているかということをやっぱり知りたい、伝えたいとなると、フリーランスに任せるということになるんですね。
2010年にチュニジアで始まったジャスミン革命をきっかけに、ソーシャルメディアや衛星放送アルジャジーラなどで瞬く間にアラブ世界に広がった反政府・民主化運動の総称。
そうするとまたこれが国内で批判される。「新聞社やテレビ局の連中っていうのは危険なところには行かず、立場の弱いフリーランスに行かせるのか」と。行っても行かなくても批判されるんだよね。これ本当にジレンマだよね。
となるとどうするのか。「行ってください」とは言えない。だけどフリーランスが自己責任というかたちで取材をしてきます。たとえば後藤さんが行って、子どもたちの悲惨な状況をリポートする。そうするとそれを、当時はテレビ朝日の『報道ステーション』が放送するというわけです。
イギリスと日本のジャーナリストの行動の違い
その点、たとえばイギリスのBBCは公共放送ですが、戦争が始まると、真っ先に戦地に入ります。正社員である記者、カメラマンが現地からリポートします。シリアで内戦が始まった直後、私がBBCを見ていたら、もういい歳のおじいさんですよ。本当の戦争報道のベテランなんですね、白髪の男性が、ヘルメットをかぶって現地からリポートしていました。
すぐ後ろでシリア軍の爆撃によって大きな煙が上がり、慌ててリポートの最中に避難をするなんてことが起きていました。何かあったらとにかく現地へ行って取材をするのが当たり前なのです。
BBCが戦地へ行ってリポートしても、「イギリス政府が行かないでくれと言っているのに、なぜ行ったのか」というバッシングは起きません。
つまりジャーナリストの行動について、たとえばイギリスと日本とでは、非常に大きな違いがあるんですね。国内の世論に差があります。
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