池上氏解説「新聞やテレビが報じない」情報の裏側 自身も記者時代に「地獄を見た」裏取りとは

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新聞やテレビが報じない(ように見える)情報があるのは、隠しているからではなく裏取りが理由だ(写真:seb_ra/Getty Images Plus)
メディアが多様化し、フェィクニュースなどがはびこる現代。情報とどう付き合っていくのが適切なのでしょうか。ジャーナリストとして活躍してきた池上彰さんは、「世界を正しく見る方法」を身につけ、メディアリテラシーを高めることが大切だと訴えます。
愛知学院大学での人気講義「ジャーナリズム論」を書籍化した3月発売の書籍『何のために伝えるのか? 情報の正しい伝え方・受け取り方』から、抜粋・再構成して紹介します。

みなさんこんにちは。ことし(2021年)はこうして対面で皆さんの顔を見ながら話をできるのがうれしいです。これまでリモートで授業をやるしかなかったですからね。

そんなに大人数ではないので、君たちに質問をしたり、君たちからの質問を受けたり、なるべく双方向で、情報の伝え方や受け取り方、ジャーナリズムについて考えていければと思っています。

ジャーナリズムの語源は?

ではまず、そもそも「ジャーナリズムとは何だろうか」というところから。語源ですよね。ジャーナル、これは本来「日記」という言葉から派生しています。「日々の出来事を記録していく人」がジャーナリスト。そしてその積み重ね、そこから伝えられるべきもの、あるいはその方法論がジャーナリズムであるということです。

だから報道機関というのは何のためにあるのか、というと、「日々起こっているさまざまな事実を伝えること」というわけです。それがやがて歴史になるのです。

たとえば新型コロナウイルス対策をめぐって政府の方針が二転三転したり、あるいは東京オリンピック[正式名称:第32回オリンピック競技大会(2020/東京)]に関しても、開会式までにいろんな騒動やトラブルがありました。でも一番大切なことは、それをすべて記録して後から検証できるようにするということです。

2020年3月、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(当時)がロックダウンを行う前に行ったテレビ演説が注目されました。彼女は、「旅行や移動の自由を苦労して勝ち取った私のような人間にとって、このような制限は絶対的に必要な場合にのみ正当化されるものです」と言ったのです。

メルケル首相は東ドイツで育ったために、東西冷戦時、行動の自由が制限された経験を持っています。本来、民主主義では行動の自由は保障されなければならない。でも新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるためには、人との接触を極力減らす必要があるわけです。「民主主義の原則に反する部分はありますが」と、自身の経験を引き合いに、不自由を強いることについて国民に理解を求めたのです。

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