池上氏解説「新聞やテレビが報じない」情報の裏側 自身も記者時代に「地獄を見た」裏取りとは

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キャスターになって気づいたこと

その後は今度は一転して、「気象庁と消費者問題を担当しろ」と言われます。普段は消費者団体を回り、主婦連や消費科学連合会、日本消費者連盟、日本消費者協会、生活協同組合などの人たちと人間関係をつくりながら、その時々で問題になっている消費者問題をニュースにします。それ以外の時間は気象庁を回ったり、東京大学の地震研究所を回ったりしました。地震が起きたり火山が噴火したりしたら、すぐにその場所に駆けつける。そうする中で地震のメカニズムや、火山噴火のメカニズムについて学ぶことになるわけです。

そのうち今度は文部省(現・文部科学省)を担当することになり、教育改革について取材をしました。文部大臣が森喜朗(元首相)のときです。大学の共通一次試験を大学入試センター試験に変える検討をしているという、ちょうどそのころです。

文部省の担当が終わると、今度は文部省を離れて教育問題やエイズ問題、出版界の動向などを取材。さらに夜9時のニュース番組のスタッフになったところ、昭和天皇が倒れ、突然、宮内庁に行けということになったんです。それから111日間は、毎日、朝の4時半に皇居に入り、朝5時、6時、7時、10時、12時のニュースで宮内庁前から天皇の容体を報告し続けました。

1989年1月7日には、宮内庁から昭和天皇崩御をリポート。昭和が終わり、平成の世が始まったと思ったら突然、転機が訪れるんです。「4月から首都圏ニュースのキャスターをやれ」と。そこからキャスター人生が始まりました。『首都圏ニュース』を5年、その後は『週刊こどもニュース』を11年間担当しました。

それまでは記者として特ダネを掴むことばかり考えていたのに、いざ『首都圏ニュース』のキャスターになってほかの記者が書いたニュースを読む立場になると、NHKのニュースがあまりに難しいことに気づいたんですね。「こんなの視聴者にわからないよ、もっとわかりやすくするべきだ」って言い続けていたら、「じゃあ、こどもニュースをやれば、わかりやすいニュースができるだろう。お前やれ」と言われ、『週刊こどもニュース』のお父さん役をやることになったというわけです。

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でも、もともと私は記者ですから、『週刊こどもニュース』をやっているころに、いろいろなニュース解説本を書くようになると、テレビに出てしゃべっているより本を書くほうが楽しいということに気づいたんですね。

そして54歳のとき、もう潮時だろうと思ってNHKを辞め、いまに至るというわけです。

そしてことし(2021年)でフリーランスになって16年が経ちました。トータルで48年間、メディアに関わってきたわけですね。

勝手なことばかり話しましたが、だからこそ、ここでそのメディアでの生活を振り返りながら、メディアのあり方についてみんなと議論していこうというわけです。

池上 彰 ジャーナリスト

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いけがみ あきら / Akira Ikegami

1950年、長野県生まれ。1973年慶応義塾大学卒業後NHK入局。ロッキード事件、日航ジャンボ機墜落事故など取材経験を重ね、後にキャスターも担当。1994~2005年「週刊こどもニュース」でお父さん役を務めた。2005年より、フリージャーナリストとして多方面で活躍中。東京工業大学リベラルアーツセンター教授を経て、現在、東京工業大学特命教授。名城大学教授。2013年、第5回伊丹十三賞受賞。2016年、第64回菊池寛賞受賞(テレビ東京選挙特番チームと共同受賞)。著書に『伝える力』 (PHPビジネス新書)、『おとなの教養』(NHK出版新書)、『そうだったのか!現代史』(集英社文庫)、『世界を動かす巨人たち〈政治家編〉』(集英社新書)など。

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